AWS re:Invent 2024 参加レポート
こんにちは、PKSHA Technology でソフトウエアエンジニアをしている豊田 康平です。12 月 2 日から 12 月 6 日にラスベガスで開催された AWS re:Invent 2024 に参加してきました。私は今年初参加となりましたので、実際に現地に足を運んでみて感じたことを中心にお伝えできればと思います。
AWS re:Invent とは?
AWS re:Invent とは、AWS(Amazon Web Services)が毎年開催するクラウドコンピューティングに関するカンファレンスです。アメリカのラスベガスで開催され、今年で 13 回目となります。5 日間で約 2000 ものセッションやイベントが実施されます。全世界から約 6 万人のエンジニアが現地に集まり、オンラインでも 40 万人が視聴していました。日本からも毎年 1000 人以上が参加しており、今年も 1700 人程が現地に足を運んだようです。
新製品の発表などが行われる Keynote や、AWS リーダーがクラウドコンピューティングの様々なトピックに関する新たな視点を紹介する Innovation talk はオンラインでも中継、配信されます。その他にも、少人数を対象として、製品の具体的なユースケースについて対話形式で発表する Chalk talk や実際に手を動かして学ぶ Workshop、AWS のサービスとはあまり関係のない個人開発プロダクト紹介 LT のようなものまで様々なセッションがあります。
また、Expo 会場では各スポンサーがブースを出しており、各社の製品の話を聞くことができます。今年の re:Invent で発表された新しいサービスやアップデートについては、AWS Black Belt にまとめられています。
今年の re:Invent
今年の re:Invent も昨年に引き続き生成 AI がトレンドとなっていました。しかしそのフェーズは変化しており、単純に生成 AI でできることをアピールしていた昨年から、利用することは前提としていかにビジネス活用可能な状態にするかという点に話題が移っていました。
PKSHA グループでは AI を活用したソリューション・プロダクトを提供し続けており、AI をビジネス活用し社会実装していくノウハウがきちんと共有され、蓄積されています。これは生成 AI の活用についても同様のことが言え、上記で述べたような今回の re:Invent で感じた潮流の変化は、PKSHA グループ内で広く議論されているような内容と類似しているように感じました。re:Invent に参加することで、世界のトレンドを肌で感じるとともに、PKSHA が生成 AI の活用で世界の最先端を行っていることを再認識することができました。
AWS re:Invent 参加に際して
弊社は多くのチームで AWS のインフラ環境やサービスを全面的に採用しています。PKSHA が届けている「未来のソフトウエア」を安定して早くデリバリーするためには、AWS などのクラウドサービスを正しく使いこなすことが重要です。AWS に関する理解を深め、AWS の開発者や全世界のエンジニアとのネットワーキングを行い、それらを社内に広く共有することを目的として、弊社ではエンジニアが現地参加できるように参加費や旅費の補助を行っています。
私は現在、PKSHA Technology の AI Solution 事業本部のアイテックチームと、グループ会社である株式会社アイテックの開発部に所属しています。アイテックチーム、およびアイテック社でも普段から AWS を活用しており、日本全国に散らばる駐車場機器とクラウド上のシステムが接続されて遠隔で駐車場を管理したり分析したりできるような仕組みを運用しています。日々増えていくアイテック機器導入駐車場の管理に活用できる部分がないかを探るために、IoT関連のセッションを視聴するのも、今回参加した目的の一つでした。
▼アイテック社に関するインタビュー記事はこちら
また、アイテックチームが所属する AI Solution 事業本部では、AI 技術を利用してクライアント企業様に様々なソリューションを提供しております。近年は LLM 案件の引き合いも強く、案件の数・規模ともに大きいものも増えてきました。LLM を実務で提供するにあたって、コスト・セキュリティ・スケーラビリティなどをどのように最適化していくか、というところも気になっているポイントでした。
re:Invent 参加に際して、AWS アカウントチームからは、日本語対応のイベントや出展ブースの紹介をしていただきました。また、re:Invent 開催前の事前 Meet-up にも招待いただきました。日本からの参加者の方々と顔を合わせることができたことに加え、AWS Japan の社員の方々、re:Invent 経験者の方々から現地での注意点やおすすめのセッションを伺えて、安心感が増すとともにモチベーションも高まりました。
現地の様子
AWS re:Invent はメイン会場となる Venetian を中心にラスベガス・ストリップにまたがる 6 つの会場でセッションが実施されます。会場数からもわかる通り規模が非常に大きく、空港からすでに Badge Pickup ブースが設置されていました。
各 Keynote には多くの人が訪れており、CEO Keynote には私も1時間ほど前から並んで入場しました。Keynote は会場の規模もさることながら、開始前に DJ やバンドの生演奏が行われていることにも驚かされました。もちろん Keynote も毎回ワクワクするような内容が多く発表されており、個人的には現地でその臨場感を味わいながら Keynote を聞けることの価値は非常に高いなと感じました。
EXPO 会場では多くの企業がブースを出展しており、常に賑わっていました。私もセッションの合間には EXPO に足を運んでいました。
イベント終盤には re:Play と呼ばれるパーティが開催され、有名アーティストのライブ含む様々な催しが行われていました。
セッションの紹介
前述の通り、今年の re:Invent も生成 AI がトレンドでした。セッション数を見ても他の分野と比較して生成 AI 関連のものが多く、また現地でも生成 AI 関連のセッションには開始前から長蛇の列ができていました。
Keynote では生成 AI 関連の新製品・新機能が多く発表されました。
Amazon Bedrock においては、モデルの蒸留を行うことができる Model Distillation や自動推論により生成 AI の出力を検証するための Guardrails Automated Reasoning check、複数の AI エージェントを協調動作させるための multi-agent collaboration などが発表されました。コスト、セキュリティなどに焦点を当てた機能が強化されると共に、より複雑なユースケースを満たすための機能が充実してきており、実際に生成 AI をビジネスで提供することを見据えた進化が進んでいることを感じました。
生成 AI 関連のものを含むセッションにも参加してきたのでいくつかご紹介します。
AIM276-INT: Generative AI in action: From prototype to production
生成 AI のプロトタイプを本番システムに移行するにはどうすれば良いか、ということをテーマとしたイノベーショントークでした。本番システムに移行するために重要な要素として、モデル・コスト・データ・信頼性を挙げて AWS のサービスでこれらをどう扱うかという点について語られていました。
例えばモデルについては、早いスピードで最新のモデルが更新されていく中、様々なモデルを柔軟性を持って試していく必要があります。Amazon Bedrock を用いれば、既存のモデルはもちろん、今回の AWS re:Invent で発表された Bedrock Marketplace で 100 を超える Fundamentail Models を利用できたり、外部で学習したモデルをインポートしたりすることもできます。同様に今回発表された SageMaker AI で独自のモデルを学習して Bedrock に取り込むということもできます。更にこれらをシンプルな API で利用できるようになるため、様々なモデルを柔軟に利用することができます。残り 3 つの要素についても、AWS のサービスを使うことでコスト効率を上げ、ビジネスを差別化するデータを管理し、プライバシーとセキュリティを向上させることができます。そしてこれら 4 つの要素をシームレスに統合することで、プロトタイプを本番システムに移行できる、ということが述べられていました。
前述の通り弊社でも生成 AI 関連の案件の引き合いは強く、お客様に本番システムとして提供を行っています。昨今の変化の早い生成 AI についてキャッチアップしていくことはもちろん必要ですが、プラットフォームとして強化が進んでいく AWS のサービスを適切に利用することで、開発効率と品質の向上を目指せるのではと感じられるセッションでした。
IOT307-R: Deploy LLMs at the edge with AWS IoT
オフライン LLM を AWS IoT Greengrass のコンポーネントとしてデプロイする Builder’s session です。このセッションは AWS エキスパートが同席する中、実際に手を動かしながら学んでいく Workshop のような形式で行われました。Workshop の設定としては、2 台の EC2 インスタンスを用意して片方を開発機、片方をエッジのゲートウェイデバイスとして扱います。このうち、エッジデバイス上に生成 AI ベースのタスクを実行するような Web アプリケーションサーバーをデプロイして実際に触ってみるというものでした。
前述した通り、私の所属するアイテックチームおよびアイテック社では駐車場機器を扱っています。そして駐車場業界は今まさに DX が加速している最中で、駐車場機器自体も新しい仕組みを入れていく余地が多分にあると考えています。本セッションで取り扱ったような生成 AI をデプロイする、というのが実際のユースケースに直接結びつくかは検討が必要になりますが、個人・チームとして手札を増やすという意味で学びの多いセッションでした。
DOP220-INT: Reimagining the developer experience at AWS
生成 AI によって大きな変革を迎えているソフトウエア開発に対して、AWS がどのようにその進化を取り入れていっているかを紹介するイノベーショントークでした。
本セッションでは、開発者がコードを書くことに費やせる時間は 1 日に 1 時間程度であるという Software.com の調査結果に言及し、それ以外のドキュメンテーションや調査などの時間を減らすために AWS のサービスがどう役に立つのか、と言ったことが述べられていました。具体的には、今回の re:Invent で発表された Amazon Q Developer のドキュメント生成、コードレビュー、ユニットテスト機能を利用するという内容で、実際にデモを見ながらこれらの機能について紹介がありました。
私の所属するチームは少人数であることから、一人一人の開発効率を上げると共に、開発者体験を向上させていく必要があると考えています。その観点からも本セッションは興味深いものでした。実際に現場にいると生成 AI の影響力が大きくなってきていることを感じますし、上手に利用していくことでよりソフトウエア開発を加速させられるはずなので、引き続き情報のキャッチアップと活用を進めていきたいと思います。
おわりに
今回参加した目的の一つに、世界の最先端が生み出される場の空気を肌で感じたい、というところもあったのですが、それは十分に達成できたと思います。Keynote の盛り上がりやセッション・イベントの盛り上がり、規模感に圧倒されましたし、ここでイノベーションが起きているんだという実感は、自分にとって非常に良い刺激になりました。AWS re:Invent は「学習の場」だということが述べられていましたが、世界の潮流に乗り遅れないよう私自身も学習し続けなければならないと感じましたし、そのモチベーションを与えてくれる場でもありました。
また、Keynote で度々出されていた "We invent so you can reinvent" という言葉がとても印象に残りました。未来を見据えて発明を続けている AWS を今後更に活用し、ソリューション・プロダクトの社会実装をより加速していきたいと思います。
— INFORMATION —
PKSHA グループでは、生成 AI からコンテナ技術、IoT など様々な技術を用いて開発を行っています。一緒に最先端を走り、Innovation を生み出す仲間を募集しています!
少しでもご興味を持っていただけた方は、是非カジュアル面談しましょう。
▼ 中途採用:ソフトウエアエンジニア
▼ 26 年新卒:ソフトウエアエンジニア 本選考
▼ 全職種の募集要項はこちら
▼ Wantedlyはこちら