駐車場×AIから拓ける未来――既存の枠を超えて、運営会社とユーザーに新しい価値を提供していく
「未来の駐車体験を形にする」をミッションに掲げ、ロック板のない駐車場やスマートフォンから精算できるアプリを展開してきた駐車場機器メーカーの株式会社アイテック。
2019年よりアイテックはPKSHAと連携し、事業展開を進めています。アイテック取締役副社長を務める森川直輝さんと、PKSHAでアルゴリズムソリューション事業本部エンジニアリングマネージャーとアイテック社の執行役員を兼任する三村裕介さんに、アイテックの事業概要と魅力、M&Aの経緯、技術活用の事例、今後の展望や可能性についてお話を聞きました。
駐車場機器メーカーがソフトウエアの力で駐車体験に革命を起こす
ーーアイテックの事業概要についてお聞かせください。
森川:アイテックは駐車場機器メーカーで、駐車場運営会社に対して駐車場機器を販売することを主たる事業としています。主力商品は、ナンバー認証システムを使ったロック板のないコインパーキング用の「ロックレス」システムです。
このロックレスシステムには、車の出し入れ時にロック板に乗り上げなければならないという利用者のストレスを減らし、車体が傷つくトラブルや不正出庫を減らせるメリットがあります。
アイテックは機器を販売するだけでなく、その後のメンテナンス、コールセンター、管理ツールを自社で所有しており、一貫して提供できるのが特徴です。機器の販売や工事、コールセンターなどの機能も提供しているため、駐車場運営管理業務をまるごとサポートさせていただいております。
ーー描いてきたロードマップと、現在注力していることについてお聞かせください。
森川:アイテックの創業者はもともと技術面に明るい人物で、2010年にロックレスシステムの開発・販売、2013年にはスマートフォンから精算できるアプリを開発し、ロックレス駐車場に展開を開始するなど、先見の明がありました。
とはいえ、2019年のPKSHAグループ参画がアイテックの転機になったことは間違いありません。社内にハードウエアエンジニア、ソフトウエアエンジニア、アルゴリズムエンジニアを置き、あらゆるものを内製できるようになりました。これは競合他メーカーと比較して強みになっていると感じます。現在はPKSHAの持つチャットボットなどを自社のコールセンターに導入するといったアセットの掛け算で、今までにない駐車体験を作っていくことを目指しているフェーズです。
三村:アイテックは駐車場機器メーカーなので、駐車場を運営する会社に多く商品を買ってもらうことがビジネスの土台となっています。一方で、直接的なお客様は運営会社ですが、日常的に駐車場機器を使うのは一般の方です。つまり、私たちは運営会社とユーザーの両方に向き合う必要があります。
いまだ街中には現金決済しかできないコインパーキングがたくさんあり、駐車場業界は旧態依然としてDXが進んでいません。その原因は、ソフトウエアに強みを持つ企業が参入してこなかったことにあると考えています。だからこそ私たちは、運営会社にとってもユーザーにとっても新しい体験を、ソフトウエアの力によって創り出したいと考えています。
たとえば、駐車場機器を購入した運営会社に対しては、PKSHAのモデルを詰め込んだ管理用ダッシュボードアプリを通じて付加価値を、そしてユーザーに対してはモバイルアプリを通じて駐車場へのスムーズな入出庫、決済などの体験を生み出す機能を提供しています。
ーーお二人がアイテックの事業に感じる魅力をお聞かせください。
森川:世の中に流通する自動車の台数は年々少なくなっていますが、路上駐車の規制の強化などもあり、コインパーキングのニーズは伸びていると感じています。例えば都心部のマンションでは、荷物の積み下ろしや運搬においてもコインパーキングに停めているトラックの姿をよく目にします。
それに加えて自動運転技術が進化し、国土交通省がMaaSの全国への早急な普及を進めるなど、業界は大きな変化の渦中にいます。そんな伸びていくマーケットで、PKSHAの技術を使って未来を創っていけること、駐車体験に革命を起こしてけることは非常に魅力的です。
また、運営会社が必要とする機能部分の多くを内製しているからこそ、どんどんサイクルを回すことで、より良い組織や、より優れた技術を増やしていくことができます。さらに、アイテックの機器はすでに12万車室以上も街中に設置されており、実装しやすいハードを持っていることが大きなアドバンテージといえるでしょう。
三村:私はWebエンジニア出身で、最初は駐車場業界のことがよくわかりませんでしたが、知れば知るほど面白いと感じます。その理由は2つあって、1つ目は、駐車場は街角にあるので、自分のしたことが街を変えている実感を得やすいことです。
2つ目は、公道ではなく私有地である駐車場は、法律上の制約が少ないため、かなり自由に面白いものを作れることです。そして、医療機器などであれば開発に5年以上かかるケースも珍しくありませんが、駐車場機器であれば短いスパンで開発できます。
「こういう駐車場を作ろう」と考えてから、開発して、現場に設置され、駐車料金が支払われるまでに、1年もかからないんです。こうした環境でものづくりができるのは、エンジニアにとって非常に魅力的だと思います。
アイテックとPKSHAだからできたこと。グループ参画の経緯と技術活用の事例
ーーアイテックとPKSHAはどのような経緯で連携するようになったのでしょうか。
森川:アイテックの創業者が70代になり、今後も事業継続していくためには、技術力があって新しいものを一緒に作れる会社と手を取りあいたいと考え、PKSHAグループへの参加が実現しました。MaaSを含めマーケットが大きく変化しているタイミングだったこともあり、私たちのハードウエア事業にPKSHAのソフトウエアやアルゴリズムを重ねていけたら強いだろうと考えたのです。
アイテックは駐車場という膨大かつリアルな「場」を持っており、当時PKSHAが持っていなかったバーティカル(特定の業界・業種に特化したプロダクト)のAI SaaSを展開するうえでも、非常にポテンシャルがあるのも期待できるポイントでした。
以前のアイテック社員の平均年齢は40代半ばで、当時のPKSHA社員の平均年齢は31歳。雰囲気もカルチャーもまったく違う二社が融合して一緒に仕事をするわけですから、一朝一夕にはうまくいきません。
しかし、お互いのやり方をリスペクトし、見て学んだり、会話したりしながら、どうしたら良いものを作れるかを考えて仕事を進めることで、少しずつ信頼を積み重ねていきました。また、成果を出した人をきちんと評価するように人事評価制度を刷新したことで、メンバーに新陳代謝が起こり、より強い組織に変貌を遂げたと感じています。
ーー二社が連携したことで、技術的に実現が可能になったものがあれば教えてください。
三村:アイテックのアセットにPKSHAの技術を掛け合わせることでリリースできたものはいくつもありますが、代表的なものは「ナンバーペイ」と「i-BARMS PRO」の2つです。
「ナンバーペイ」は、駐車場ユーザーがモバイルアプリで使用できる機能です。アイテックのロックレスシステムには駐車した車の車番を認識できるという強みがあったので、ナンバー認証で自動精算が可能なシステムを作ることができました。
ユーザーは対応駐車場で一度ナンバーを認証させれば、 次回からは入庫確認のワンタップのみで自動的にサーバー側に情報が送られるので、ハンズフリーで精算ができます。
車番認識できる駐車場というアセットを持っているアイテックと、モバイルアプリやソフトウエアの技術を持っているPKSHAだからこそ実装できた、面白い機能といえるでしょう。
「i-BARMS PRO」は、アイテックの駐車場運営ノウハウとPKSHAの技術を組み合わせた、駐車場運営会社向けのAI SaaSです。駐車場運営会社が「i-BARMS PRO」を使うことで、ダッシュボードで駐車場の遠隔操作やデータ分析ができます。過去の売上データを確認するだけでなく、PKSHAのモデルを用いることで未来の売上予測ができるようになったり、運営に役立つ外部公開データを集約して業務効率化も行えたりするツールとなっています。
こうしたサービス群については、「他メーカーの機器では到底できないことがアイテックの製品を買えばできるようになる」と、業界内でも注目を集めています。ナンバーペイと同じく、アイテックのアセットに対して、PKSHAがソフトウエアやAIの力を投入することで、お客様に新しい体験を提供できた好例です。
「もれなくアイテックが入っている世界」駐車場×AIから拓ける未来
ーーお二人が思い描くアイテックの未来像はどういったものでしょうか。
三村:私たちは、駐車場機器でトップシェアとなり、駐車場機器にはもれなくアイテックが入っている世界を作りたいと考えています。売上を伸ばしたい意図もありますが、それ以上に、獲得シェアを増やすことでプラットフォーム的な動きをしていきたいのです。
アイテックの駐車場はAPI化されており外部連携が可能ですが、シェアが少ない状態では、外の世界から見て連携するメリットはあまりありません。しかし、どの駐車場にも当たり前のようにアイテックが入っている世界になったら、連携するインパクトが大きくなります。
現時点で、駐車場業界においては「アイテックって面白いことやっていますよね」といった評価をいただいていますが、業界外の一般の人々から「最近の駐車場って何だか面白いことができるようになったよね」という言葉が出てくるところまで持っていきたいですね。
そのために、先ほどのナンバーペイのように、ユーザーに嬉しい体験を提供できる駐車場をもっと増やし、シェアを拡大していくことが直近の課題だと考えています。
森川:ユーザーにとって嬉しい体験を増やすのと同じくらい、嬉しくない体験を減らすのも大事です。駐車場領域には解消すべき「不」がたくさんあると思っています。旅先でどこに駐車できるのかわからない、駐車場があっても停めにくい、現金でしか決済できない、トラブルが起こって管理会社に電話しないといけない、などです。
旅行や移動において駐車場は目的地ではないので、駐車がスムーズにいかないとストレスを感じます。そんなストレスを減らすために、機器メーカーができることはまだたくさんあるはずです。
駐車場業界には、一部の大手を除き、エンジニアがいない小さな会社がたくさんあります。人手と技術がないから、「不」を認識できても、改善が難しいのです。こうした業界課題にPKSHAのAI技術を浸透させることができれば、いいサービスを生み出していけるのではないでしょうか。
少し未来の話をすると、自動運転が普及した世界でもやはり駐車場は使われると思います。ライドシェアやEVチャージャーといった未来のモビリティに対しても新しい体験を提供できるようなポジションを確立していきたいです。
駐車場×AIのポテンシャルは非常に高いので、これから起こる変化の兆しを捉えて時流に乗り、本当に勝てるマーケットを見極めて価値を提供していきたいと思います。
求めるのは、カオスな環境で未来のプロダクトを作っていきたい人
ーー今後アイテックで共に働いてほしい人材についてお聞かせください。
三村:エンジニアにとって駐車場ビジネスは面白いフィールドだと思います。ハードウエア、IoT、AI、ソフトウエアなどを組み合わせ、「この空間でどんな面白い体験を提供できるか」を考えて、わくわくするものを作っていきたい人にはフィットしそうです。DXが進んでいない業界なので、あなたのアイデアが業界初になる可能性も大いにあります。
「未来のソフトウエアを形にする」というミッションを掲げるPKSHAは、未来のプロダクトを作ろうというマインドを持った人たちが集まる集団です。新しいものを作ろうとすると、どうしても不確定要素が多く、曖昧性が高くなります。
そんなカオスな環境を楽しむマインドがあり、なおかつ駐車場という舞台で未来の不確かなものを作っていくことに自分の力を最大限活かしたい人が入ってくれたら最高ですね。
未来のプロダクトを創り上げていく過程はまさに“総合格闘技”ですが、一人ですべての領域を網羅している必要はありません。PKSHAでは、異なる才能(人と人との差分)を「デルタ」と定義しています。デルタを持ったメンバーがコラボレートしていくことで、初めて未来のプロダクトは具現化できる、というのが私たちの共通認識です。
軸足を置ける専門領域を持ち、異なるデルタを持つ周囲の人を尊重してコミュニケーションを取っていける人がジョインしてくれることを期待しています。
森川:そうですね、僕らが提供する駐車場の姿と同様に、スタンスも”ロックレス”な人がいいですね(笑)。
この仕事は、何かをしようとするとハード側の制約もあるし、調整しなくてはならないことも多くて、関わる人の幅が広いです。そういった部分も含めて楽しめる人、リアルなものに感情が動く人、何かを深めるより広げていきたい人が向いているように思います。
直近でプレスリリースも出ていますが、業界大手の企業様でも新たにアイテックが正式採用され、現場を新しく入れ替えている上でメインで使われていくことも決まりました。これからアイテックは大きく変わり、「もれなくアイテックが入っている世界」に向けて加速していきます。
正直なところ、現在は機器や新システム利用などの問い合わせとご相談が多く、取り組めていないことがたくさんあります。そのぶん、技術を社会実装していく醍醐味を十分に味わえる環境であるとお伝えしたいです。
ーー最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。
森川:今回はアイテックの事業についてお話しさせていただきましたが、アイテックとPKSHAが連携しているからこそ味わえる魅力について、最後にお話しさせてください。
両社にはそれぞれ異なるカルチャーや考え方がありますので、PKSHAにジョインしてアイテックに配属される場合、まるでパラレルワークのように両社の魅力を感じることができます。
例えば、PKSHAでは先端技術に尖った人が数多くいますが、一方のアイテックは業界内の技術や知見に特化した人がいます。また、アイテックはバーティカルにサービスを提供しているため、コールセンター、メンテナンスなど多くの職種を内包しているところも、PKSHAとの大きな違いだと思います。そして、PKSHAは創業から約10年の会社であるのに対し、アイテックは30年の歴史を歩んできました。これらの違いは「良い・悪い」ではなく、こうした異なる文化を持つ2つの会社で過ごせることは、とてもいい時間になると思います。
三村:PKSHAに入ってアイテックに配属されるとしても、PKSHA側で得られるエッセンスがかなり大きいです。「AIをはじめとした新しいテクノロジーを使って何ができるのか」はPKSHAが全力でトライしているテーマなので、アイデアはたくさんもらえますし、それを駐車場にどう落とし込んでいくかも相談できます。
PKSHAのアルゴリズムエンジニアに駐車場データの利活用のアドバイスをもらい、面白い機能をサービスに組み込んでいくことも可能です。アイテックとPKSHAの両方に関わり、経験を積める環境に身を置くことで、エンジニアとして大きく成長していけるでしょう。
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