「毒と耐毒性」というテーマに込められた思いとは?事業間の共進化を促進する第3回PKSHA Conferenceの舞台裏
PKSHA Technology(以下、PKSHA)は、R&D、AIソリューション、AI SaaSという複数領域にまたがる事業を展開しており、AI・ソフトウエアを軸に事業連携を行うことで独自性につなげています。PKSHAグループが目指すVision「人とソフトウエアの共進化」の実現に向けた現在地をお届けするマガジン『PKSHA ナラティブ』。
この記事では、事業間の連携を推進すべく企画され、今回第3回を迎えた大規模社内勉強会「PKSHA Conference」についてご紹介させていただきます。初のオフライン実施であり過去最大の盛り上がりを見せたイベント実施の裏側の舞台裏に迫るべく、運営事務局の3人にインタビューを実施しました。
事業・職種を横断して、とにかく色々なメンバーが参加したくなるために
ーーもともとPKSHA Conferenceはどのようにはじまったのですか?
澤端: PKSHA Conferenceはグループ間の様々な知識・ノウハウを共有する大規模勉強会で、第1回はR&Dの領域で活躍するアルゴリズムエンジニアの発案で、社内技術を全社に広く知ってもらいたいというところから始まりました。エンジニア間では定期的に社内勉強会等を行っているものの、事業への実装を進めるにあたり、失敗談も踏まえたより実践的な知見共有の場所が必要だと感じたことがきっかけで実施されました。
第一回PKSHAカンファレンスに関する記事はこちら
ーー第1回はドット絵のオンライン会場が印象的でしたよね。今回3度目にして初のオフライン開催ということですが、その他にどういった変化を意識したのでしょうか?
澤端:PKSHAグループには、AIのR&Dとソリューションを展開する事業や、AI SaaSを展開する事業等、複数の会社があるのですが、初回は研究発表会というニュアンスが強く、研究者から他者への技術情報共有という一方通行になりがちだったという反省がありました。領域を超えて化学反応を生み出すことが目的だったので、これではいけないと様々なグループ会社の様々な立場の人が発表者・聴講者としてそれぞれ参加し、双方向の状況共有を促進する仕組みを考えました。そのためには、まずは運営側にグループ会社のメンバーも巻き込むことが重要だと思い、Workplaceカスタマーサクセスの大島さんと、Communicationエンジニアの小杉さんを含め、合計5名のメンバーに新たに参加してもらうことになりました。
小杉:私はもともと社内のエンジニアイベント等でも運営をやっていたり、PKSHAの「共進化」というビジョンにも共感していたことから、横断的な情報交換の重要性は感じていました。ですので、話を聞いた時にはぜひ参加したいと思いましたね。
大島:実は、私はその当時入社2週間目だったのですが、PdMの花塚さんから声がかかったことがきっかけでした。入社間もないののにこうしたことに声をかけてもらった事にびっくりしましたが、個人的には社内の横の繋がりを作れるという点に魅力を感じてぜひやってみたいと思いました。
澤端:エンジニアとビジネス、SaaSとソリューション、などさまざまな垣根を超えたイベントを目指していましたが、PKSHAにはもともと全社的に、横断的な情報交換にポジティブなカルチャーがあると思います。もちろん通常業務もありますが、新しい事業を生む上でこうした繋がりを生む取組みは必要だという考えが定着していて、上司含めて周囲のメンバーが非常に協力的だったのでとてもありがたかったです。今回、初のオフライン開催が上手く行ったのもそのおかげだと思っています。
事業間連携である「共進化」を生み出すために頭を悩ませた半年
ーーあまり聞きなれない「共進化」というPKSHAの独自のカルチャーがありますが、共進化が発生するためにどういった工夫があったのでしょう?
小杉:まずは様々な共進化の形がある中でも、今回の発表で意識してもらいたい、わかりやすいテーマを設定しようと試みました。私たちは「人とソフトウエアの共進化」というビジョンを掲げているのですが、「共進化」という言葉は学術用語ですし、あまりなじみがないですよね。今回、グループ間の共進化を推進するにあたり、ふと、元々の語源である自然界の共進化について改めて調べてみたんです。共進化とは、「生態的なつながりをもつ複数の生物間の相互に生じる進化」のことですが、相利共生パターン(例: ランとハチドリ)や、片利片害パターン(例:捕食者と被捕食者、毒と耐毒性)など、色々あることがわかったんです。その中でも「毒」と聞くとちょっとぎょっとするのですが、社員の関心を引けるだけでなく、「〇〇(毒)に苦しみ、△△な突破口(耐毒性)を見出した」というように、発表もしやすいテーマだと考え、共進化自体への理解を深めるきっかけになってほしいという思いも込めて「毒と耐毒性」というテーマを設定しました。
大島:とはいえ実際に共進化の促進を実現するには、結構試行錯誤が必要でした。現場の社員がどういった情報を欲しがっているかや、普段どういった事に困っているか等、ヒアリングすることからスタートし、私だけでも8職種、10人以上にヒアリングを行いました。各運営メンバーで現場の課題を持ち寄った上で、どの事業にどういう情報のニーズがありそうか等を議論しました。
澤端:大きなテーマとしては技術とビジネスの相互理解に加えて、ソリューションとSaaSという2つの事業軸があるのでそこの理解が進む形にもしたいという思いはありました。とはいえ、事務局メンバーで「この話を○○さんに発表してもらうと面白そう」と情報を持ち寄りながらも、運営メンバーが議論する時点で既に前提知識や各チームの背景のすり合わせが必要であったり、ギャップを埋める作業に結構骨が折れましたね(笑)一方で、依頼をすると快くプレゼンを引き受けてくれる方ばかりだったのはありがたかったです。
大島:あとは、普段関わりのないメンバーが参加をするので相互理解が進むよう、ベーシックな職種や部署の紹介なんかも必要だったので、アイスブレイクでご自身の職種のジョブディスクリプションや、仕事の中で最も楽しいと感じる瞬間、ご自身の仕事のキャッチコピーを取りまとめて紹介する取り組みも行いましたね。
澤端:即興で、大島さんがソリューションとSaaSをおにぎり、アルゴリズムをおにぎりの具に例えていたのが個人的におもしろかったですね。会場の皆さんもカジュアルに楽しみながら参加してくれていたのでよかったです。
100名以上がオフィスでイベントに参加、職種・事業の枠を超えた多様なAI関連セッションを実施
ーー当日は延べ100名以上がPKSHAオフィスのラウンジに行き交っていて、かなり熱気がありましたね。運営として、手応えはどうでしたか?
澤端:初のオフライン開催で、PKSHAはリモート勤務の社員も多く参加ハードルが高いかと思っていましたが想定以上の方が参加してくれたことはよかったです。あとは、当初の目標の1つであったグループ会社からの参加者を増やすという点でもSaaS事業からの参加者が過半数を超えた他、エンジニアとビジネスの比率も約半々で、多方面に興味をもってもらえたかと思います。
小杉:あの人数が一度に集まることも珍しいので、物理的にも会場がかなり熱を帯びていましたね。様々な経験や知識、想いを持った人たちが同じ空間を共有することで、まさに共進化的に、議論が盛り上がるんだなと感じました。
ーーアイスブレイクの後に、メインであるポスターセッションが行われましたがこちらはいかがでしたか?
澤端:今話題の大規模言語モデル(LLM)の技術的な話を筆頭に、新規プロダクトがどのように生み出されたかや、SaaS組織連携の話等、職種を跨いでさまざまなプレゼンテーションが実施されました。常時10名から、多い時には30名ほどがポスターを囲んでいました。
小杉:今回の発表に一通り参加した営業メンバーが、R&D部門のLLMに関する発表が特におもしろかったと言っていたんです。数式だらけのポスターで、一見技術者以外にはとっつきづらい内容だったので、意外でしたね。今回はプレゼンターが、職種を超えて情報共有をするという趣旨をくんで、前置きをしっかり話しながら、内容をわかりやすくチューニングしながら話してもらったのがよかったんだと思います。前回までにはない反応でしたね。
澤端:個人的には、PKSHA CommunicationのSaaS組織の話等が非常におもしろかったです。例えば一口にセールスと行っても複数の役割を持つセールスメンバーがどう関わっていくか、お客さんにどうアプローチしていくか等、 自身の所属しているソリューション事業部とは異なるスタイルの営業のやり方を知ることでどう技術が提供価値につながっていくのか自身の解像度があがりました。
澤端:あとは、2019年にPKSHAグループに加わった駐車場機器メーカーのアイテックの発表も印象的でした。事業もカルチャーも違うハードウエア企業であるアイテックに、どうソフトウエアを融合・事業化し同じ未来を描けるようになったかという話は、まさにPKSHAが実現すべき共進化を体現しているなと。
小杉:終わった後の懇親会も楽しかったですね。仕事以外の趣味の話等で盛り上がることも多く、事業の裏側にどんな人がいるのか、実際に交流することで理解を深められました。今後何か業務で発生した時にも、コミュニケーションを取りやすくなったと思います。
常に新しいものを生み出すために、「共進化」カルチャーを増幅したい
ーーこのイベントを通じて本来の目的であった事業間「共進化」につながるという感触はありましたか?
小杉:その感触は結構持てましたね。自分自身も、今後の連携を考える良いきっかけになりました。例えば、普段私は、プロダクトを作る立場として「PKSHA FAQ」の新規機能をリリースしているのですが、ソリューション部門での提案内容を聞くことで、プロダクトがAIとどのように結びついていくか、どのような世界をつくっていくべきなのか、の解像度を高めることができました。それにより、ユーザーにとって真に必要なことや、未来の価値をイメージしながら、開発ができるようになると思います。また、社内の繋がりが増えたことも、今後に向けて大きな価値だと思います。
大島:私は普段AI SaaSのカスタマーサクセスという立場で、PKSHAの技術やプロダクトを活用して、どのようにお客様の課題を解決するか、試行錯誤の毎日です。現在、PKSHAグループ全体でNotionを活用して「ノウハウ(Know How)の一元化が進んでいるのですが、新たな課題と対面した時に、社内で誰に聞けば答えを導き出せるかという「ノウフー(Know Who)」の解像度が一気に上がったことが非常によかったです。人柄も含め対面でコミュニケーションできたことで、職種を超えてより共進化しやすい雰囲気を作りやすくなったという点も、同感です。
澤端:多くの参加者から「自身の業務に活かせそうな知見が得られた」と事後アンケートでフィードバックを頂いて事業間の「共進化」に向けた第一歩が踏み出せた感触があります。私も普段はソリューション事業部にいるため、SaaSブランドとしてのPKSHAのお客様の課題感や、人物像というのを聞いて非常に気づきが多かったです。私たちのようなアルゴリズムエンジニアの技術もひとつの武器としてSaaSに活用してもらい、一緒に変革につなげていきたいなと思いました。
特に、コンタクトセンター部門でFAQを展開する部門長がちょうど対面していた、生成AIに関する問いが、ポスターセッションの一つを聞いたことで解決したといったわかりやすい事例が生まれたことは主催者として非常に嬉しかったです。
大島:その情報が有用だったので、社内の共有会で説明したとも聞きました。あとは普段、セールス部門との接点が限られているQAチームの参加メンバーがカンファレンスで入手したビジネス系の情報をSlackでチームにシェアしているのを見かけたり、アンケートで「今後お客様と話す時に生成AIの技術的な要素もより踏み込んで話せるようになった」といった声もあったり、それぞれの立場で気づきがあったのではないかと思います。
ーー最後に、みなさんから見てPKSHAはどんな会社ですか?
澤端:今回事業や職種の枠を超えて色々な人と話しましたが、誰と話しても自分の仕事が好きな人ばかりだなと改めて思いました。知的好奇心が強くて、他の社員の話もどう自分の仕事に還元できるか考えている人が多い印象を受けます。
大島:学びの中から自分なりの楽しみを見つけ、自分ゴト化する人が多いな、と感じました。得た学びをすぐに使ってみて、新しい発見があれば、どんどん発信することに抵抗がない人が多く、組織内が面白い問いや新しい解釈に溢れている気がします。
小杉:AIに関して、様々な立場で働く社員がいる環境なので、AI全盛期における、お客様ごとの多種多様な課題や、社内に蓄積された最先端のソリューションの数々に触れられるのが、非常におもしろいと思いますね。
澤端:個人的には、自分自身の世界を豊かにするために、PKSHAにいる多種多様な仲間、チームの考え方に触れ続けていたい、と今回のPKSHA Conferenceを通じて改めて実感しました。今後もこのイベントを継続させることでグループの共進化カルチャーを増幅させ、事業のシナジーを強化し世の中に新しいものを生み出していくことを目指しています。
INFORMATION
▼イベントのお知らせ 2月10日(土)
総勢50名以上の企業・事業家が登壇するイベント「FastGrow Conference 2024」に代表上野山他、PKSHA社員が登壇します。
PKSHA Technologyでは、ともにはたらく仲間を募集しています。Wantedlyや採用サイトから応募が可能ですので、是非ご覧ください!
▼採用職種一覧
https://hrmos.co/pages/pkshatech/jobs
▼Wantedlyはこちら
https://www.wantedly.com/companies/pksha_technology