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未来のソフトウエアを作る開発チーム紹介 〜PKSHA Voicebot 篇〜

PKSHA グループでは、自然言語処理、音声認識技術等を用いた「PKSHA AI SaaS」というプロダクト群を提供しています。
これによって、PKSHA が創業から 12 年間培ってきた技術や、蓄積してきた業界ノウハウを活用したソフトウエアを、SaaS として手軽に導入することができます。この記事では「PKSHA AI SaaS」のプロダクトの 1 つである「PKSHA Voicebot」の開発運用チームについてご紹介します。

三好 良和|PKSHA Workplace エンジニアリングマネージャー
情報系の大学院を修了後、ヤフーに入社。6 年間、映像配信サービスのフロントエンド開発を担当。その後、ソーシャルゲーム会社で開発運用を担当し、フロントエンドからバックエンド、SRE やエンジニアリングマネージャーまで幅広く経験。2020 年に PKSHA グループに入社し、AI SaaS プロダクト群のエンジニアリングマネージャーを担当。


「PKSHA Voicebot」とは?

PKSHA Communication が運営する、大規模コンタクトセンターの電話対応を自動化するサービスです。主にコンタクトセンター等で働くお客様に対し提供しており、問合せ工数の削減や働きやすさの向上をサポートしています。定型的な問い合わせはボイスボットで、人が対応すべき問い合わせはオペレータが対応することで、AI とオペレーターの効率的な分業ができることが特長です。

大手金融機関や通販サービスのコンタクトセンターを中心に幅広い導入実績を持ち、毎月 30 万件を超える入電に自動音声で対応しています。 

主には、コンタクトセンターにおけるこのようなペインを解消しています。

★電話問合せの工数が膨大
コンタクトセンターに電話で寄せられる問合せは、新規のお問合せや、成約済みのお客様からの変更手続きに関する問合せなど多岐にわたります。お客様の中には、月 10 万件以上の電話がかかってくるコールセンターも存在しています。コールセンターにかかる負担も大きく、お客様への対応品質向上のためにも電話対応業務の効率化が課題となっていました。

★オペレーターの人員不足、属人化
コンタクトセンター部門では、人手不足が業務効率に大きな影響を及ぼしています。特に、複雑な問い合わせ対応が求められる保険業務では、担当者の専門知識に依存するため、特定のオペレーターに負担が集中しがちです。例えば、法人契約や外国人顧客への対応は、異なる手続きや規定が関わるため、通常の問い合わせと異なり、時間がかかります。このような状況下では、オペレーター間でのノウハウ共有が難しく、業務が個々の担当者に依存していることが大きな課題となっています。

★特に繁忙期などの入電増時に電話がつながりづらい
コンタクトセンターの KPI の 1 つに受電率(※着信した電話に対応者が応答できた割合)を掲げるお客様は多いです。しかし、一日中電話が鳴りっぱなしで対応が追いつかない・問合せの数に対して対応人員数が足りず、着電率が十分に担保できないという課題もあります。
特に 2020 年、新型コロナウィルスの影響により、お客様からのお問い合わせ件数は予測不能になり、加えてオペレーターの離職や採用難に直面した結果、お客様からの電話に対応しきれない状況となったお客様もいらっしゃいます。

4 つの主要機能群

こうした課題を解決するために「PKSHA Voicebot」は 4 つの主要機能群を備えています。

① 適切な窓口への自動振り分け

現在コールセンターにおいては自動音声案内とプッシュ入力を利用したIVR(自動音声応答)による用件分類が主流ですが、「選択肢をすべて聞かなれけばならない」「適切な選択肢を選べない」などといった課題が存在します。PKSHA Voicebot では AI 音声認識により、お客様に口頭でお話いただくだけでご用件を分類し、適切な窓口へ自動で振り分けることができます。お問い合わせは膨大な数になるので、これだけでもお客様の負担が大幅に軽減できます。コールセンターの作業効率も向上し、応対時間の短縮にもつながります。その結果、より多くのお客様に迅速で質の高いサービスを提供することが可能となります。

② 特化型エージェントでの受付業務自動化

お客様からヒアリングしたい項目をワークフロー上で組み合わせることにより、様々な受電業務の自動化が可能です。例えば、商品の在庫確認や保険金の請求、住所変更手続きの受付など、定型的な問い合わせに対して、AI が自動で必要な情報を回答したり、手続きを受け付けることができます。これにより、オペレーターはより複雑な案件に注力できるようになります。

③ FAQ エージェントでの自動回答

よくあるお問い合わせに対して、音声で FAQ を回答することができます。これにより 24 時間 365 日、即座に回答が可能となり、お客様の待ち時間を大幅に削減できます。また、オペレーターの業務負荷を軽減することにも繋がります。

④ オペレーターや Web への誘導

手続きの中には心情的な寄り添いや、複雑な用件ではオペレーターでの対応を優先するケースがあるため、人が対応すべき用件は必要なヒアリングを行ったうえで適切な窓口のオペレーターへ転送します。また、Web が優位なお手続きは、Web フォームやチャットボットへ誘導します。

技術スタックとシステム構成

技術スタック

  • フロントエンド: 管理画面の実装には Vue.js を採用し、AWS 上に構築

  • バックエンド: Web API の実装には Ruby on Rails を採用、対話エンジンには Python を採用し、AWS 上でスケーラブルに展開

システム構成

  • 電話交換機(PBX)にてお客様の電話を受電し、音声認識エンジンを経てリアルタイムに Rails で対話処理をします

  • Rails で得たレスポンスを音声合成エンジンを通して、PBX からお客様へ返答します

  • ボットによる 1 次受付後の 2 次受付や、必要に応じてオペレーターへ転送し、引き続きお客様からの問い合わせや依頼を受け付けます

  • コールセンターの管理者は管理画面を利用し、ボットや対話フローを設計します。また対話データを分析することも可能です

開発チームの構成・開発サイクル

開発チームの構成
2024 年 11 月現在、5 名のソフトウエアエンジニアと、プロダクトマネジャー、SRE、QA で開発を行っています。この他にセールス、マーケティング、カスタマーサクセスなどビジネス面を支えるチームがあり、ソフトウエアエンジニアは開発運用に集中できる環境になっています。
チームで LLM や機械学習を利用した機能を開発することがありますが、その際は PKSHA  グループに所属するアルゴリズムエンジニアと協働して開発と改善を行っています。

開発サイクルと雰囲気
スクラム開発では 2 週間のスプリントで開発しています。スプリントレビューではプロダクトオーナーを含む Biz メンバーに向けてデモを行い、率直なフィードバックを得ることができます。
この他、毎日の朝夕会の中で Biz を含めた進捗の共有があり、雑談も盛り上がります。業務はほぼリモートワークで成り立っており、関東からは遠方の地域で開発するメンバーも少なくありません。一方で対面するコミュニケーションの機会も重要視していて、月に 1〜2 度、会社のイベントや勉強会のイベントのタイミングで出社して顔を合わせることも定期的にしています。

技術的なおもしろさ・やりがい

「PKSHA Voicebot」の開発チームで働く楽しみは色々ありますが、ここでは代表的なものをいくつか取り上げてご紹介します。

音声処理の複雑さとチャレンジ
Voicebot には音声認識(STT)と音声合成(TTS)の 2 つのコンポーネントが必要で、テキストだけを扱うプロダクトよりも技術的な複雑さが増します。エンドユーザーのインターフェースが電話のみになることにより、テストやモニタリングについても一般的な Web 開発と異なりますし、エンドユーザーの利用環境や発話内容の特性にも注意を払う必要があります。そういった特性を考慮しながら機能開発や改善を進めることにチャレンジできます。

リアルタイム性の要求
テキスト型のプロダクトとは異なり、音声対話では応答の遅延がユーザー体験の悪さに直結するので、音声認識、対話処理、音声合成の各工程をミリ秒単位で最適化する必要があります。電話対応はストリーム処理なので、回答途中でさらに音声を受け付けたり、話の途中で応答を生成するなど、独自の工夫にもチャレンジしていくことになります。

マルチモーダルな提供価値
カスタマーサポート業界において、サポート手段のメインは電話であり、多くの割合を占めています。それは FAQ や Chatbot など Web による解決手段を準備していても、お客さまによっては良くわからないからとりあえず電話をかけて柔軟に解決してもらおうと考える方もいますし、高齢者や視覚障害者など、テキストインターフェイスが苦手な方にとっては解決の選択肢が限られるからです。これらの状況において Voicebot では、ユーザビリティの観点で自然な会話形式での問題解決にチャレンジしていますし、高齢者にとって普段使い慣れた電話と同様の使用感で解決可能になることを目指しています。

新たなユースケース探索
通話に自動で対応するコンテキストにおいてもまだ価値を出せる部分があると考えており、シンプルな電話対応だけでなくテキストサービスとの連携や外部 API との連携を含めた新たなユースケースを探索しています。昨今の LLM の発展も踏まえて実現可能なことが広がっている環境において、技術面からプロダクトの価値探索を進めることができます。

おわりに

私たち「PKSHA Voicebot」のチームは、音声技術と AI を組み合わせることで、カスタマーサポートの未来を創造していきたいと考えています。単なる自動応答システムではなく、人と AI が共進化して働ける環境を実現し、より良い顧客体験を目指しています。技術的な課題は山積みですが、だからこそやりがいがあり、チームメンバー一人一人が自分の専門性を活かしながら、新しいプロダクトの開発に取り組んでいます。

そして今、この事業に一緒に参画してくれる仲間を探しています。 今すぐの転職を考えていなくても構いません。私たちのビジョンや文化、具体的な仕事の内容についてお伝えしつつ、気軽な雰囲気であなたのキャリアの展望や興味分野についても伺えればと思います。興味のある方は、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう!

―INFORMATION―

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