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越境し、学び合い、共進化する——R&Dを担う”PKSHA Research”の根底思想とは

「R&D部門」と聞いてどんなイメージが湧くでしょうか。

純粋に技術や理論を追求する個人、あるいはビジネスと少し距離を置く組織……。
そんな印象を持つ人にとって、PKSHA TechnologyのR&D部門である” PKSHA Research”は異質に映るかもしれません。先端情報技術の「社会実装」を目的とし、技術サイドやビジネスサイド、時には事業領域さえも越境して活動しているからです。

PKSHAグループが目指すVision「人とソフトウエアの共進化」の実現に向けた現在地をお届けするマガジン『PKSHA ナラティブ』。

この記事では、R&D部門・PKSHA Researchがどんなビジョンを持ち、何を実現しようとしているのか、アルゴリズムリードとしてこのチームを牽引する竹川に聞きました。

竹川 洋都 │ アルゴリズムリード
東京大学数理科学研究科修士終了後、富士通株式会社にてストレージ管理ソフトおよび深層学習技術の研究開発を行う。
その後、PKSHAに参画。予測最適化領域を中心に多数のアルゴリズムの社会実装に加え、GNN等の研究開発を推進。


「理論的に優れている」だけでは意味がない

——PKSHA Researchはどんな役割を担っているのでしょうか。

PKSHAグループには、”Layer0”と”Layer1”、そして”Layer2”と置く事業階層の概念があります。まずはここから説明させてください。

“Layer1”では、先端情報技術によって個別のクライアントを支援し、課題解決のためのAIソリューションを提供しています。
“Layer2“では、Layer1で生まれるようなAIソリューションをSaaSプロダクトという形で社会に実装し、人々の生活を変えるような価値を提供していくことを目指しています。
そして”Layer0”は、それらを実現するための研究開発を指します。

と言っても、PKSHA Researchは基礎的な研究だけを行っているわけではありません。

一般的に企業のR&D部門と聞くと、「○○研究所」「△△ラボ」と名づけられているような、ビジネスとは独立した機関を思い浮かべるかもしれません。しかしPKSHAはあくまでも社会実装を目的としているので、単に技術的に尖っていたり、優れた論文を出せたりするだけでは意味がないんです。

——「東大発ベンチャー」の響きから純粋なリサーチャー集団のイメージを抱く人もいるかもしれませんが、実際はビジネスに直結するR&Dを重視していると。

もちろん、理論的な部分で大きな結果が得られることにも意味はあると思っています。ただ、理論を追求することとアプリケーションに落とし込むこととの間には大きなギャップがあるのも事実です。理論と同時に、ビジネスとして伸ばしていく可能性を追求することが私たちのミッションなんです。

私たちが追いかけているイメージに近いのは「検索エンジン」かもしれません。私たちの暮らしに欠かせない存在となった検索エンジンは、言語処理の高い技術を使いながら、広告ビジネスとしても大いに機能していますよね。

こうした新たな価値を社会へ実装するため、PKSHA Research には”Layer1”や”Layer2”への適用意識があり、かつ音声や言語、動画など多様な領域の先端技術に明るいメンバーが集まっています。

広く越境して技術横断領域にチャレンジ

——PKSHA Researchでは”Beyond the Boundary”(越境せよ)という考え方を大切にしていると伺いました。これの意味するところを教えてください。    

前述の通り、PKSHAグループは先端情報技術を通じたプロダクトやソリューションの社会実装にこだわっています。これを実現するために、私たちは「いかに社会や消費者のニーズと適切に接続しユーザーに届けるか」「異分野の技術をいかにすり合わせて付加価値につなげるか」「キャッシュフロー(付加価値の循環)が回る形でいかに社会に届けるか」の3点を重視しています。

行動ベースで言えば、私たちには積極的に技術横断領域にチャレンジし、その結果が社会でどのように使われるかを意識し続けることが求められているんです。

R&Dには、アカデミックな世界も含めて「狭く深く」になりがちな傾向もあります。だからこそ広く越境し、知識も言語もソフトウェアエンジニアリングも、それぞれの知見をどんどん拡大していかなければいけないんですよね。

——「広く越境する」ために必要なこととは?

どんなに尖った技術や知見を持っている人でも、1人でできることには限界があります。そして実際に行動しなければ越境することはできません。そこで私たちは以下の3つを基本姿勢としています。

「共創型 - 研究」……1人でやらない
「異分野 - 境界」……分野をまたぐ
「実践型 - 研究」……試して深める

参考)カンパニーデック 6ページ目
https://speakerdeck.com/pkshadeck/pksha-technology-hui-she-shao-jie-zi-liao

たとえば私の場合は、専門であるアルゴリズム領域以外についてもアンテナを立て、ビジネスサイドの議論やクライアントの現場へもどんどん入っていくようにしています。物理的にも精神的にもどんどん越境していくことが大切。会社としても、部署を越えて動くことについては一切制限していません。

「アルゴリズムリード」として、組織へもアプローチする

——竹川さんはPKSHA Research でどのような役割を担っているのでしょうか。

「アルゴリズムリード」、いわゆるテックリードのアルゴリズムエンジニア版のような役割で、技術をもとにしてチームを引っ張っています。個人的にはグラフや複雑なデータ、関係に使われるアルゴリズムに興味があり、グラフニューラルネットワークなどで社会に価値提供できないかを模索しているところです。

また、社内には技術的に尖っているメンバーが多いので、彼らにより活躍してもらうため、組織運営の課題解決にも積極的に取り組んでいます。

——組織運営の課題とは。

技術面では尖っているものの、ちゃんと議論が整理できていないという場面は多々あります。エンジニア同士の議論が発散して面白いアイデアが出るのは良いのですが、時には議論を収束させ、タスクを分解して分担していくことも必要。こうした場面でも、一人ひとりがタスクを抱え込むのではなく、いかに共創していくかを考えなければいけません。

そこで私は、自分自身が難易度の高いプロジェクトに取り組むだけでなく、組織面のアプローチとして難しいプロジェクトのサポートや入ったばかりのメンバーのサポート、技術力向上のための勉強会開催などに取り組んでいます。

仮想空間でナレッジを共有した”PKSHA Conference”の狙い

——組織を進化させるために、竹川さんが実際に手がけている取り組みを知りたいです。

一例として、2022年8月に開催した”PKSHA Conference”を紹介します。これはPKSHAグループ内の技術や知見、ビジネスのナレッジを共有する社内展覧会のようなイベント。平日の午後を丸々使って実施しました。

背景には、組織が大きくなる中で、チームごとの知見が組織の共通知見になっていないという課題感を持っていたことがあります。また、新卒2年目の若手メンバーからも「社内にあるソリューションやプロダクトの知見をたくさん知る機会がほしい」という声が挙がっていました。

——”PKSHA Conference”はどんな形式で開催したのでしょうか。

社員のアバターを仮想で作り、仮想のオフィススペースに集まってもらって、R&D責任者のプレゼンや具体プロジェクトとそこでのソリューションなどを発表するポスターセッション、PKSHA Research からのR&D情報共有などを行いました。

参考にしたのは、昨今の国際学会などのカンファレンスです。少人数で濃密な話をするために、アバターを作って開催しているイベントが増えているんですよ。社内で「こんな感じがいいね」と話していたら、若いメンバーが楽しんで仮想空間を作ってくれて、本当のオフィスのような高クオリティの仕上がりになりました。Web3の世界観さながらに、もうここで働けるんじゃないかと思うくらいのクオリティです。こうした取り組みをみんなで楽しく進められるのは、テクノロジー企業ならではかもしれませんね。

”PKSHA Conference”はバーチャルオフィスツール「Gather」を使用して開催

——PKSHA Research からの共有内容は?

時間をかけて研究しているテーマや、クライアントとの共同研究内容などについてじっくりと説明しました。

こうした深い部分の共有や議論は、日常業務の中ではなかなか難しいのが現実です。これまで会話したことがなかった人との関係性を作るきっかけにもなりました。名刺代わりに自分たちの取り組みを発表できる機会はありがたいと感じましたね。

新しいことを学び合いながら共進化していく

——PKSHAグループには技術サイドやビジネスサイドの各部門があることに加え、新たな事業領域の仲間も増えています。先端技術に対する理解度は人それぞれだと思いますが、理解の差を埋めていくために工夫していることはありますか?

社内の定例会などではみんなの話を聞くように強く意識していますね。メンバーから質問しやすいよう、私からは些細な、くだらない話題を投げかけることも多いです。もちろん技術分野に関して困っている人がいれば、しっかり相談に乗るようにもしています。アルゴリズム周りについては、技術サイドもビジネスサイドも、組織全体でより理解を深めていきたいと思っています。

開催している勉強会も多様なんですよ。アルゴリズムエンジニア向けにディープな内容の勉強会を開くこともあれば、もっとライトな内容や、ビジネス寄りのテーマを扱うこともあります。新たに入社したメンバー向けには”PKSHA University”という研修プログラムが設けられており、私も講座を担当しています。

——逆に、技術サイドのメンバーもビジネスサイドの知見をキャッチアップするために努力しているのでしょうか。

もちろんです。新規ソリューションなどの仮説を議論する際には、ビジネスサイドのメンバーからヒントをもらうことがとても多いですね。エンジニアの間でも、情報工学や機械、物理、経済、法律、金融など、それぞれの多様な専門知識やバックグラウンドを生かして学び合っています。

共通しているのは、自身の専門領域を生かすことはもちろん、新しいことを学ぶことが本当に好きな人たちだということでしょうか。このスタンスがなければ先端情報技術の領域では活躍できないと思います。チームとしては、「新しいことを学び合いながら共進化していく」感覚を大切にしています。

世界を変える、新しい常識となるプロダクトを生み出したい

——PKSHA Research の一つのゴールである社会実装は、どのような状態になれば「達成した」と言えるのでしょうか?

短期的なゴールとしては、取り組んできた研究開発内容が”Layer1”と”Layer2”で実際に使われること。中長期的な視点で言えば、検索エンジンのように、社会に当たり前に溶け込む存在になることです。

「これが実現すれば、世界のみんながハッピーになれるよね」。そんなふうに自分たちがワクワクしながら、世界を変えるような、新しい常識となるプロダクトを生み出せたらと考えています。

そのためにも、この会社の尖ったメンバーの力をもっと生かしていきたいです。互いの専門領域や強みをつなぎ合わせ、新たな発見を共有しながら、開発した技術の社会実装を本気で目指していきます。



INFORMATION

PKSHA Technologyでは、ともにはたらく仲間を募集しています。Wantedlyや採用サイトから応募が可能ですので、是非ご覧ください!

▼採用職種一覧
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取材・執筆:多田慎介
編集:鈴木洋佑
撮影:横倉茉莉恵