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生成AI時代を生きる学生のキャリアの創り方 -誰も教えてくれなかった大切なルールについて

2022年後半、生成AIの出現を期にテクノロジーの進化はますます加速をしています。
この記事は、2024年1月に代表上野山が大学生のみなさんに「生成AI時代を生きる学生のキャリアの創り方」というテーマで登壇した内容を紹介します。テクノロジーの変遷を振り返りながら、AIによって変わっていくこれからの未来について学生たちと考えました。

上野山勝也(PKSHA Technology 代表取締役)
未来のソフトウエアの研究開発と社会実装をライフワークとし、人と共進化/対話をする多様なAIアシスタントを創業以来累計約2600社に導入。
ボストン コンサルティング グループ、グリー・インターナショナルを経て、東京大学松尾研究室にて博士(機械学習)取得後、2012年PKSHATechnologyを創業。
内閣官房デジタル行財政改革会議構成員、内閣官房デジタル市場競争会議構成員、デジタル庁参与等の公務に従事し、社会におけるAI/ソフトウエアの在り方を検討。


前提:キャリアをあえてゲームとして捉えてみる

キャリアデザインの話をする時に、あえて「ゲーム」という言葉を使っています。どの会社に入るか、あるいは研究所に残るか、起業するか、色んな選択肢がありますが、基本的には何かしらのキャリア選択をほとんどの人がしています。このプロセスを、如何に楽しみ、充実した社会人生活を過ごすか?というとても重要なゲームです。私も就職活動の時に、色々な業界を受け、色々なことをしたのですが、「就職活動やキャリア創りってそもそもどういうゲームなのルールなの?」という大切なことは誰も教えてくれなかった。
学生のみなさんに自分らしく、ハッピーになるキャリアを創っていただけるよう、そのゲームにおけるルールを少しお伝えしたいと思っています。

ゲームのルール説明の前に、キャリアをはじめあらゆる物事をゲームとして捉えることが何故重要か?というということをお伝えさせてください。テレビゲームでもスポーツでも、ゲームをやっている時には、勝つことや目標達成のためではなく、そのプロセス自体がおもしろくて夢中になったという経験をお持ちだと思います。自分にとって最適なキャリアを作るためには、いい仕事につくべきとかこの会社に入ったら勝ち、ということではなく、まずは楽しむという出発点に立つことを意識してみてください。
更に、ゲームでは、複雑な状況やルールがありますが、それらのポイントを捉えて戦略的に目標に向かって進んでいきます。キャリアもそういったゲームだと捉えて、物事を抽象化して「ポイントを掴む」という姿勢を持つことが大事です。では始めましょう。

ルール①:これからの社会はAIが全ての業界を変えていく

私は2012年にPKSHA Technologyを起業して、「人とソフトウエアの共進化」というビジョンのもと、人と対話するソフトウエア作りに取り組んで、今期で12期目になります。学生のみなさんとキャリアについてお話しするにあたり、2030年40年というのはどんな時代か、というところから始められればと思います。

我々の見立てでは全産業が、ソフトウエア産業化していくと考えています。
「Software is eating the world」というインターネットブラウザを開発した Marc Andreessen氏の言葉がありますが、ソフトウエア技術がソフトウエアでないものを飲み込んでいくということが今、起こり続けています。そして、これは一過性のブームではなく不可逆なメガトレンドです。
「産業革命」の次に起きてるのが「情報革命」であり、時間をかけて全業界がソフトウエアによって形を変えていくということが起きています。
同時にソフトウエアというものは、中期に全てAIになっていくーーソフトウエアというものの処理が高度化しAIになっていき、ここから5年くらいでソフトウエア以外の業界は劇的に変わっていくということが、時代背景についてまず考えていることです。

図の左側がソフトウエアがソフトウエアでないものをアップデートしていく話で、もうひとつの時代感として右の日本の人口ピラミッドの話があります。グラフの左が日本全体、右側が日本のデジタル人材の分布で、コードを書いていなくても今の20代の若い人達はデジタルリテラシーがかなり高いということを表現しています。一方で、日本全体はこのピラミッドでいうと上に寄っていて、ここで日本社会のほとんど重要な意思決定はなされている。
これが、ここから5年10年かけてほとんどの業界がソフトウエアによって書き換えられていくため、エンジニア以外にとってもソフトウエアの専門性を一定持って社会に働きかけるということは非常に重要だと思います。これは非常に重要で、この点を深掘りしていければと思います。

非常に重要なポイントとしては、キャリアを考える時に、今の延長線上で5年後10年後を考えると基本的に間違えるということ。人間は去年こうだったから今年もこうだろうという予測をしがちですが、今起こってるイノベーションは非連続かつ非常に速いスピードで動いているので、5年、10年先だと思っていたことは、人間の予測よりも遥かに早く来ます。なので、少し悲しい話ではありますが、親世代からのキャリアアドバイスはほとんどが時代遅れになっている可能性が高いと認識するところを出発点にしてください。

ルール②: 終身雇用から、自分経営のゲームに

1つ目は「終身雇用」がなくなり自分でキャリアを設計/デザインしていかなければならない「自分経営」のゲームに、パラダイムシフトがあります。昔は、終身雇用を前提に、どの会社に入るべきかを選択するというゲームでしたが、現在は複数の会社を経験することを前提に、自分のスキルや経験をどのように積み上げていけばよいか、という自分を経営するゲームに変わっています。

皆さんの親の世代はまだこのルールチェンジを体感的にわかっていないことが多いので注意しましょう。親は子供を心配するあまり間違ったアドバイスをしてしまうっという皮肉な現状が各地で起きています。

AI化が進み、不確実性が高い世界でどうしていけばよいか、ということに関して私なりの見解を追ってお話ししていければと思います。

ルール③:受験は「一般解」、キャリアは「個別解」を見つけるゲーム

2つ目の前提として、キャリアデザインは、受験とゲームのルールが根本的に変わりますーーキャリアデザインというのは、特定の条件に対する個別解が存在するゲームであって、一般解のゲームではありません。受験やテストは、正解がみなさんと隣に座ってる人が同じ正解ですが、キャリア創りにおいては、Aさんにとっての正解とBさんにとっての正解は違うということです。これは、極めて重要な考え方で、「どっちの職業になるといいですかね」という話をよく聞かれるのですが、それは自分次第で、一般的にこちらがよいというのはほとんど存在しない。受験のパラメーターでキャリアデザインをすると絶対に間違えます。「人気企業はここだから私も受けよう」というのは、典型的な間違いのパターンで、自分が何が好きか何が得意かを探索することで見つかる自分だけの正解があり、自分の正解は隣の人にとっては不正解。そういうように個別解を見つけていくというのが就職活動であり、キャリアデザインのゲームルールの2点目です。

ルール④:キャリアには「探索」「発見」「拡張」という3つのフェーズが存在

では、そのルールの中でどうすればよいかーー今日一番お伝えしたいことは、キャリアデザインというのは、基本的には自分と社会とのWin-Winのポイントを探索することからはじまるゲームだということ、そしてこれには以下の3段階があるということです。探索して、意味のポイントを発見して、発見したらそのまま価値を増幅する...この3つの段階を経るゲームであるということが非常に重要になります。

そういう意味でいうと、社会人1年目というのはほとんど探索期。私自身、インターネットやAIの領域で生きていこうと決断したのは26歳なんです。新卒で入ったコンサルティングファームにいた4年程の期間は、探索フェーズでした。このフェーズを経た上で、自分がここが最高にやりたいところを見つけることが次の発見のフェーズなんですね。例えば、「安定しているからこの会社に行こう」と終身雇用を前提に考えるのは探索フェーズをすっ飛ばしちゃってるんです。自分がやりたいことと、外界に提供する価値のポイントがまだ見つかっていないのに長い間働く会社に入ってしまうと、日々「あまりおもしろくないけど働くってこういうことかな。」みたいな感じで過ぎていく。これってあんまりハッピーなキャリアではないと思います。

なので、やはりキャリアデザインというのは①自分が心が動く/向いている仕事を探索し、②発見した上で、③そこで腹を決め拡張していくことで、好きでやりたいことと、社会に対する価値が一直線に乗るところを見つけていくゲームであるということが今日一番お伝えしたいことです。

ルール⑤:社会人初期は、ゲームクリアのために最も大切な「探索期」 

私が就職したのは22〜23歳、修士卒で3〜4年ぐらいコンサルティングファームに入り、色々なプロジェクトに取り組んだり、プログラムを開発してみたり、何かに首を突っ込んではずっと探索をしていました。この時の重要なコンセプトは「ワールドモデルを拡張する」ということなんです。AIの研究をしてる人はよく分かると思うんですが、aiboのようなロボットに部屋の中を動き回らせる感じです。すると、ロボットが部屋と相互作用して部屋の抽象的な空間モデルを内部にワールドモデルとして獲得するんです。そうすると、簡単に部屋の中を歩けるようになるんですが、部屋の外から出すとすぐこける。なぜかというと、部屋の外は環境が異なるからなんですね。なので、この環境が変わっても判断ができるワールドモデルをちゃんと拡張して脳内に立ち上げるということが非常に重要なんです。例えば大学でいうと、授業のクラスの空間や、サークルの空間のことだけわかれば良いかもしれません。でも、社会はもっと格段に広いので、色々試してみる探索フェーズというのが必要。体感になりますが、探索フェーズで何がやりたいか分かるまで、3年とか5年かかるんです。大学時代はほとんどの人がこのフェーズにいて、就職活動中に色々と話すことで徐々にワールドモデルが拡張して自分が何がやりたいか/やりたくないかという解像度上がってきます。

シリコンバレーで探索期から発見期に移行した実体験

私の場合、何をやればいいか考え込んでいた時に、先輩に「一度シリコンバレーに行ってこいよ」って言われたんですよね。当時まだインターネットがそんなに普及してなかった時に、非常に人気があるブログがあって、そこで20人程の学生がサンフランシスコのアップルストアの1Fに集合して何かおもしろそうなことをする、という企画に声をかけてくれたんです。無事選考を通過して、そこで三日三晩、日本人のエンジニア等も含めシリコンバレーの大人と議論をしたーーこれが衝撃的な体験で、本当におもしろかった。今までの学生生活とは根本的に違う何かを自分は今体験している、という感覚があったんですが、これが今振り返ると「ソフトウエアとか、インターネットってものがものすごくおもしろいものだ」と気づいた発見のフェーズだったんです。色んなことをやって、部屋を出て、色んな人と話して...それでどこで自分の心が動くのか、っていうことを最終的に発見できたということです。何をやりたいかというのは大体30歳ぐらいまでに、発見できれば充分だと思います。

起業家と対照市場がはまった状態として「ファウンダーマーケットフィット」という言葉がありますが、ファウンダーとしてのみなさんのキャリアと、外界のマーケットがフィットするところを探索して、世界と共進化して自分の好きと得意を発見していくというようなことが、キャリアのゲームの入り口になってくるかなと思います。今回、生成AIというタイトルがついていますが、生成AIによってキャリア創りのゲームが根本的に変わることはないと考えています。あくまで、自分と社会とのWin-Winのポイントを見つけ出すというゲームのルールの中で、自分のやりたいことを発見していくということが重要だと考えています。

探索期から発見期に移行するポイント=とにかく色々やってみる

探索のひとつの例としてPKSHAの事業モデルの話をします。我々のやっていることは先端技術の社会実装ということなのですが、やってみると非常に難しいーーなぜかと言うと、技術と社会実装の距離が遠いからなんですね。そこでどう社会実装を実現しているかと言うと、距離が遠い中で、試行錯誤する過程を社内にデザインしていて、それがまさに探索フェーズに近いと考えています。先端テクノロジーを社会実装しようと思うと、「本当にビジネスが成立するのか」とか、「お客さんはこれが本当に必要なのか」とか、どんどんいろんな問いが出てくる。色んなステークホルダーと議論する中で、何を実現したいかがどんどん紡ぎ出されていく。探索する時に重要なのは色々なことをやって色々なフィードバックをもらい、ワールドモデルを拡張することーー我々は今、400人くらいの会社全体で探索をしながら日々新しいものを発見しようとしています。

まずは、インターンをしてみるでも、色々な業界をみれる会社に入るでも、とにかく色々やってみて、ワールドモデルを拡張して、30歳ぐらいまで発見できたら、基本的にはハッピーな社会人生活が待っていると思います。友達と議論する中でも、友達にとっての正解と自分にとっての正解は違うという前提で、自分にとってフィットするものは何か、探索して、発見して、自分のゲームをクリアする方法をデザインしてほしいと思っています。

最後に:学生時代に大切にしてほしい3つのこと

最後に3つ大切なことを伝えさせてください。

ー社会に感じるあなたの"違和感"を大切にしてほしい
まず1つは、学生時代、社会に対して違和感を感じることがあると思うのですがそれを大切にして欲しいということ。私も学生の時に感じることがあったんですが、誰も口に出さないし、なんとなく自分が変なのかもしれないと思ってました。今言えることは、多分、世の中に対して若者が感じる違和感って、多分あってるんです。これが、だんだん自分にあわない仕事に就くとその違和感を忘れてっちゃうんですよね。違和感を無視するとキャリアの探索から発見に行けないので、違和感を大切にしてほしい。

ー思春期の悩みこそ大切。それがあなたのキャリアの軸足になる
2つ目は、キャリアにしても、将来にしても、悩むのは当たり前だということ。思春期に、何の職業に就こうとか、自分は世の中に価値を出せるかとか、自分よりできる人がたくさんいるとか色々な悩みがあると思います。でも、その中で自分は何するのかと考えること自体がキャリアをデザインすることの根本なんです。もし、起業をしたいというような方がいるとすると、起業して一番成功するのは、思春期に悩みまくった人なんですよね。自分という有限なリソースをどこに振り向ければいいのか、なんで自分は存在しているのかということも含めて、自分自身もずっと悩みながら経営してきている。キャリアに悩む事は当たり前で、ただ、ゲームのルールをわからずに悩むのではなく、ルールを一定分かった上で考えるということがポイントです。

ー社会の壊れているものを、治していく。その主体者になってほしい
最後に3つ目ーー我々は近未来から見ると壊れているものを探して、未来のソフトウエアでそれを直そうとしているのですが、今後、AIや技術がドライバーになることにより、壊れたものがちゃんと治っていって社会が変わっていくということ。そして、これを担い未来を作っていくのが、これから近未来を生きていく若い人、つまり今日参加されているみなさんだということが、今日最後のメッセージです。

色々お話しさせていただきましたが、スキル云々という話ではなく、キャリアデザインがどういうゲームなのかということが伝わって、みなさんがハッピーになるキャリアを創っていただけたらと思っています。

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