みんなで育てるAIチャットボットーーPKSHAが実践する従業員とプロダクトが共進化する働き方とは
PKSHA Technology(以下、PKSHA)は、AI技術のリーディングカンパニーとして社会や企業との共進化を実現するプロダクトやソリューションの提供を続けています。そしてPKSHA社内では、社外への価値提供の種子となるような新しいプロジェクトの企画も積極的に実施されています。
PKSHAグループが目指すVision「人とソフトウエアの共進化」の実現に向けた現在地をお届けするマガジン『PKSHA ナラティブ』。
この記事では、PKSHAグループ全体を横断し、社内の問合せを一括対応するAIチャットボット「Minsky(ミンスキー)」について取り上げます。立ち上げ当初はFAQの数が少なく「正しい答えが返ってこない」と指摘されることもありましたが、今では毎月、常時社員数の40%が利用するまでに。社内で愛される存在へと成長しました。
今回は「Minsky」プロジェクトの取り組みと今後の展望について、プロジェクトメンバーであり、初期の開発を担った山本健介さんと、現在のプロジェクトリーダーを務める岡田匡崇さんに聞きました。
社内問合せ自動化の社内検証で始まったMinsky
Minskyとは、PKSHAグループのSlack上で利用される社内問合せ対応AIチャットボットです。人事、経理、総務といった管理部門への問合せに対応し、登録されたFAQをもとに自動で回答したり、適切な部門の担当者に自動でメンションを送り、有人対応の橋渡しもします。
Minskyはなぜ誕生し、PKSHAの中でどのように浸透していったのか。まずは初期のプロジェクト立ち上げ期について山本さんに聞きました。
—— Minskyプロジェクトが始まったきっかけは何でしたか。
山本:もともとPKSHAはカスタマーサポート領域を支援する目的でチャットボットサービス(PKSHA Chatbot)を開発し、エンタープライズ企業を中心に提供してきました。このサービスは、いわゆるコールセンターのオペレーター業務を自動化し、補助する役割を担うものです。
5~6年前から日本企業の生産性が社会課題となり、DX推進の潮流が全国的に広まりました。これを機にPKSHAの技術を社内の生産性向上に活かせないかと考え、社内の問合せに対応するチャットボットサービスの可能性を検討し始めたのです。
正直なところ、はじめの頃は社内の問合せを自動化するのは難しいだろうと考えていました。というのも、それまで開発してきたカスタマーサポート領域のチャットボットは、お客様から同じタイプの質問が大量に来ることが前提にありました。一方、社内の問合せは個別具体性の高いものが多く、FAQとして一般化しづらいものも一定存在しています。
社内の問合せを自動化するサービスは生み出せるのか。これを検証するためにまず社内で動かし始めたのが、「Minsky」の前身となったチャットボットです。Slack上で社内の問合せに対応する最低限の機能を備えたチャットボットを開発し、FAQ登録などの準備を整えるよりも先に、全社的にその存在を周知するところから始めました。
—— その後、社内の変化などについて教えてください。
山本:はじめは回答するためのFAQが登録されていませんから、自動化には程遠い状態でした。CEOから「全然正しい答えが返ってこないけど」とコメントが来たこともあります(笑)。やっぱり最初から自動対応を目指すのは難しい、ということがわかりました。
問合せた人は、疑問が解決できないと業務の担当者に直接問合せることになりますよね。この流れを自動化するメンション機能を追加したことが、利用率を高めるきっかけとなりました。Minskyに質問を投げかけると、自動で回答が返ってくることは少ないけれど、回答できる人に自動でメンションが通知される。これが「とりあえず色々聞いてみよう」と思ってもらえるきっかけになったのでしょう。
利用率が高まったことで問合せの学習データが蓄積されて、やがてそのデータに基づいたFAQの自動化も進んでいきました。この検証から、社内の問合せではチャットボットが人同士を接続する機能が重要ということを学びました。
そして誕生したのが、エンタープライズ企業の社内問合せに対応するAIヘルプデスクです。こちらではエンタープライズ企業が利用しやすいよう、SlackだけでなくMicrosoft Teamsに対応しています。さらに、人の目を気にすることなく個別質問ができるDMでの問合せ機能も追加しました。Minskyの学びをもとに作られた本プロダクトは、PKSHA Workplaceのヒット商品です。
社内みんなに利用される・愛されるAIチャットボットへ成長
PKSHA Workplaceが提供する新プロダクトの種子となったMinsky。多くの社員が活用することで、その成長はさらに加速していきました。この浸透を下支えしていたのが、1年前からMinskyのプロジェクトリーダーを務める岡田さんです。
—— 岡田さんは新卒入社から間もないタイミングでプロジェクトリーダーに抜擢されていますよね。その経緯を教えてください。
岡田:入社後のメイン業務としてはカスタマーサクセスをやっているのですが、ミニマムかつスピーディな実装にはもともと興味がありました。事業部長からMinskyプロジェクトのリーダーについて声がけをいただいたときは、「ぜひ挑戦してみたい」と二つ返事で引き受けました。山本さんがMinskyの根本となる機能を作ったあと、私はその拡張を担う役割を果たすことになった形です。
—— 担う役割は「拡張」とのことですが、どのような狙いを定めて取り組んできましたか。
岡田:一番大きな割合を占めるのは、PKSHAグループ全員がMinskyを当事者として扱える仕組みを整えることです。ちゃんと社内で使われて、愛されるAIチャットボットを育むことを目標に掲げました。
—— 社内で使われるために工夫したことはありますか。
岡田:ひとつは「Minskyは便利だ」という認知を拡げることです。とにかく使われるものになるよう、さまざまな施策を重ねました。入社時の事務手続きにMinskyを導入したのも、その一例です。入社後の労務ツールなどの登録からMinskyを利用することで、社員の心理的負担を軽減し、なじみぶかい相棒になるよう配慮しました。名刺発注もここでできることから、社員全体に「名刺発注はMinskyでする」という行動が浸透しています。
また、「パブリックチャンネルだけでなくDMでも利用できる」といった機能面の周知は徹底しています。「使いやすい便利なツールなんだ」と理解してもらうことが使われるためには重要なことだと考えました。
—— 愛されるAIチャットボットにするための具体的な施策について教えてください。
岡田:Minskyはもともと別の名称でしたが、本格化を機に全社員を対象に名称のアイデアを公募しました。選考委員会で4案までに絞り、PKSHAグループ月末定例で発案者が全社員に向けてプレゼンを行い、その場で全社員に投票をしてもらいました。最終的に人気の高かった名前が、現在の「Minsky」(※)です。
—— 自分達で名前を決めてもらうことで愛着が感じられるようにしたんですね。
岡田:はい。その他には、Minskyの管理画面アカウントを社員全員に配布して、誰でもFAQの追加や修正をできる仕組みにしたのも施策のひとつです。Minskyは同プロジェクトに関わるメンバーだけが育てるものではなく、社員みんなで育てるもの。この感覚を浸透させられたことで、Minskyの成長はさらに加速したと感じています。
社歴・キャリア関係なくプロジェクトを推進できるのがPKSHAのカルチャー
山本さんが推進した「開発」フェーズから、岡田さんが率いる「拡張」フェーズへ。全社員を巻き込みながら、段階を経てPKSHAグループ全体の管理部門の問合せ窓口として育っていったMinsky。その成長の背景にはさまざまな“PKSHAらしさ”が内包されています。
—— それぞれの視点からプロジェクトを振り返り、どのような点にPKSHAらしさを感じていますか。
山本:岡田さんは学生時代からインターンとしてPKSHAに関わっていたものの、実はまだ新卒1年目の社員なんです。そんな岡田さんがリーダーを担い、私のようにキャリアの長いシニアメンバーを率いながらプロジェクトを推進しているのは、役職や上下関係を意識しないフラットなPKSHAのカルチャーを象徴しているのではないでしょうか。
岡田:社内にはキャリアの差について気を遣わせるような人がいないので、本当にやりやすいですね。とはいえ私はまだ社歴も経験も浅いので、社内調整などの業務で力不足なところもあります。そこは山本さんをはじめとしたシニアメンバーがしっかりとフォローしてくれるので、安心してリーダーとしての役割を果たせているとも感じています。
山本:Minskyプロジェクトは、社内においては中長期的な成果を見据えたプロジェクトです。関わるメンバーは他の業務を抱えているので、どうしても優先順位を上げにくかったり、推進しきれずに、目的やゴールが曖昧になることは多々ありますよね。そこを岡田さんがしっかりリードして、進捗確認や合宿企画などを進行し、実行力を保ってくれているからこそ、Minskyが社内に浸透したと感じています。
岡田:Minskyプロジェクトを通じ、グループ会社を横断してさまざまなメンバーとディスカッションする機会を得られています。そのなかで改めて感じたのは、それぞれのポジションや役割は関係なく、PKSHAのメンバーがみんな“未来の働き方”について考えを持ち、積極的に取り組んでいこうとしていることです。PKSHA Workplaceは「AI-Powered Future Work――社員の知恵と繋がりを企業の力に」をビジョンに掲げ、AIと人が共進化を生み出すワークスタイルの実現を目指しています。このビジョンに込められた想いを、Minskyプロジェクトは体現しているように感じます。
企業が抱える様々な社内課題を解決できるAIチャットボットを目指す
—— 今後、Minskyにどのような展望を持たれていますか。
岡田:「社内で使われる、愛されるAIチャットボットを育む」という目標は、ある程度達成できたと感じています。今後はAIのリーディングカンパニーとして社会や企業を適切に導いていくための一端としてMinskyを活用したいです。企業が抱える社内の課題解決のためにAIチャットボットをどう活用できるのか検証をしていくのが理想と考えていますね。
—— 具体的にはどのような展開例がありますか。
岡田:例えば、直近ではGPTを用いて会社近辺の飲食店をリコメンドする機能を開発中です。これは社内コミュニケーションの活性化につながることを見込んでいます。また、社内のマニュアルやドキュメントを検索し、必要な情報を引用するようなものもありますね。また、社内の社員に向けたものだけでなく、採用候補者に向けたチャットボット開発にも現在取り組んでいます。
さまざまなユースケースのなかでどのようにチャットボットを活かせるのか、Minskyプロジェクトのメンバーが主体となりつつ、PKSHAグループのメンバー全員が気軽に検証できる。そんなプラットフォーム的な役割を果たすものとして、今後Minskyをさらに拡張していきたいです。
—— どんどん利用シーンや検証パターンが増えてくると、Minsky自体が複雑化して利用者が混乱してしまうなどの懸念はないのでしょうか。
岡田:そういったことも価値ある経験なので問題視していません。むしろPKSHA内での検証の段階で様々な問題に直面した方がMinskyの成長に繋がり、より良いプロダクトができるきっかけになると思ってます。
山本:「AI-Powered Future Work――社員の知恵と繋がりを企業の力に」をビジョンに掲げるPKSHA Workplaceにとって、自らの職場を未来の形に変革していく姿勢が大切です。Minskyは、私たちにとって改めて「未来の職場ってどんなものだろう」と考えるための良い題材ですし、未来の働き方の可能性を試す機会にもなっています。
——なるほど。MinskyプロジェクトにはPKSHAの思想が根付いているのだと改めて感じられました。
山本:そうですね。PKSHAグループのバリューと紐づけると、Minskyプロジェクトは「信頼のうねり」があるからこそ進化しているのかもしれません。社員同士が分け隔てなく議論を交わし、本質的に物事を前進させるカルチャーがこのプロジェクトの根幹にあると思います。
岡田:私も山本さんにならってバリューを引用すると、私はこのプロジェクトに「未来志向」を感じています。未来の働き方についてあらゆる仮説を持ったメンバーが、Minskyを通じて未来のチャットボットの可能性を検証していく。本来の業務との関連性の強弱は関係なく、未来のあるべき姿を思い描いてメンバー全員がこうしたプロジェクトに取り組むのが、まさにPKSHAらしさなのではないでしょうか。
ちなみに山本さんは、先日MicrosoftのTop Partner Engineer Awardのモダンワーク部門を受賞していました。(プレスリリース:PKSHA、日本マイクロソフトが主催する「パートナー オブ ザ イヤー 2023」及び「トップパートナーエンジニアアワード」を受賞)まさに未来の働き方をリードする第一人者である山本さんと、こうしてプロジェクトを共にできることを、嬉しく思っています。
山本:お客様に今後さらなる価値を提供していくために、Minskyを有効活用していくところについては、まだまだできることがありますね。岡田さんには、お客様の視点に立ちつつ、Minskyを育てていくプロセスで発見したアイデアを製品に還元していただけたらな、と期待しています。
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