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Microsoft Build 2023 参加報告
こんにちは、PKSHA Technology の AI Solution 事業本部でテックリードをしている吉沢です。先日、5 月 22 日~ 5 月 26 日にシアトルで開催された Microsoft Build 2023 に参加してきたのでレポートいたします!
吉沢 徹 | AI Solution事業本部 ソフトウエアエンジニア
東京大学工学系物理工学専攻 修士号を取得。新卒で日鉄ソリューションズにインフラエンジニアとして入社し、クラウドを活用した最新の基盤の検証や構築・移行などを担当。2021年9月にPKSHA Technologyに参画。PKSHAでは、インフラにとどまらずバックエンドやフロントエンドまで幅広い領域を担当する。また、案件遂行だけでなく、テックリードとしてアーキテクチャの型化も主導する。
Microsoft Build とは
Microsoft Build は Microsoft が開催している開発者向けのフラグシップイベントです。Microsoft365 、Azure 、Windows など Microsoft が提供しているあらゆる製品に関する発表などが行われます。新製品の発表などが行われるKeynoteを始めとして、各種サービスの紹介などが行われる Breakout Session 、製品に対するディスカッションが行われる QA セッション、各製品のプロフェッショナルと 1 対 1 でなんでも相談できる Expert Session 、ハンズオン形式で学習することができる Lab など、様々な形式のイベントが企画されています。
ここ 2 年間はコロナ禍でオンラインのみの開催となっていましたが、今回は 3 年ぶりにオフラインの会場で開催されました。
参加経緯
弊社は AI SaaS 領域で Microsoft と協力し続けており、その一環として PKSHA AIヘルプデスク for Microsoft Teams という製品を Teams 上のアプリケーションとして提供しています。今年のマイクロソフトジャパンパートナーアワードオブザイヤー2023では、「Apps & Solutions for Microsoft Teams」部門で受賞を果たしました。
この協業関係は、ChatGPT の登場とともに急増している生成型 AI への需要の増大を受けて、さらに拡大しています。Microsoft Azure では、OpenAI の GPT4 などの高度なモデルを活用した、高い可用性を誇る Azure OpenAI Service が提供されており、エンタープライズ向けに個別のソリューションを提供する PKSHA の AI Solution 事業においても Azure の利用が広がりつつあります。
このような Microsoft との協力関係がさらに深まる中で、私たちは「Microsoft Build Seattle Program」にご招待いただく機会を得ました。このプログラムは、日本 Microsoft が主催し、日本の Microsoft パートナー企業およびユーザー企業を対象としています。シアトル会場での MS Build セッションへの参加に加えて、Microsoft 本社でのディスカッション、ラップアップセッション、参加者同士の交流会など、多岐にわたるイベントが企画されています。
会場の空気感
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1年前くらいにできた建物らしくとてもきれい
私自身、海外の大きなカンファレンスに参加するのは初めてでしたが、カンファレンスというとお硬いイメージを持っていたため全体的にお祭りのような空気感に衝撃を受けました。
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Keynote 開始前には大行列ができていたのですが、そこで演奏をするパフォーマーの方がいたり、新製品の発表が行われる度に大きな歓声が上がったりと、参加者全員がこのイベント自体をお祭りとして楽しんでいる様子が伝わってきて、私自身も楽しみながらイベントに参加することができました。
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Microsoft Build に参加した所感
生成系 AI に対する高い期待と熱気
MS Build に参加して一番強く印象に残っているのは現地の熱気です。昨今の生成系 AI に対する世界的な盛り上がりもあり、MS Build でも AI に関係するどのような update が発表されるのか、私も含めて多くの参加者が期待していることが周囲の会話などからひしひしと伝わってきました。Microsoft としてもこの期待に答えるかのごとく、Keynote のほとんどの時間を AI 関係のトピックに割いており、新製品の発表がある度に大きな歓声が上がっている様子が非常に印象に残っています。
世界が生成系 AI という一つのトレンドに向かって一斉に動いている感覚を肌で感じることができたのが、今回 MS Build に参加して得られた一番のものだと思います。
AI に対する Microsoft の向き合い方がわかった
今回の MS Build では Keynote を始めとして「Copilot」という概念がとにかく強調されていました(数えてないですが、初日の Keynote だけで 100 回以上 Copilot という言葉が出たと思います笑)。Copilot は日本語訳すると「副操縦士」という意味で、Keynote では下図のように定義されています。
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ここで重要なのは「to assist you」の部分で、AI が複雑な意思決定を行うのではなく、あくまで AI Copilot の補助を受けて人間が意思決定を行う、というAIと人間の関係性が述べられています。今回 MS Build で発表された一連の Copilot 製品群もまさにこの哲学のもとで設計されていて、人間のすぐ横に副操縦士のように寄り添い、人間がタスクを遂行することを補助してくれるようなようなものになっていました。
この Copilot という考え方は、弊社内で従来からよく使われていた「ケンタウロス型 AI 」という言葉とかなり近い概念だなと思いました。ケンタウロスは上半身が人間、下半身が馬の姿をした神話上の生物ですが、ケンタウロス型 AI は人間の一部となり人間の能力を拡張するような AI と定義しています。Copilot は必ずしも人間の能力を拡張することまでは言及していないので厳密にはケンタウロス型 AI と同じ概念ではないですが、人間を主体として AI が寄り添うという AI と人間の関係性は共通しています。
Copilot を実現するための手段の拡充
今回の MS Build では Copilot という哲学を提唱するだけでなく、それを実現するための具体的なアーキテクチャや製品レベルの実装手段についての発表も多くありました。アーキテクチャレベルでは、Copilot を実現するためのフレームワークとして Copilot Stack という概念を導入していました。
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詳細の解説は割愛しますが、重要なのは Copilot を実装する上での共通のアーキテクチャが示されたことだと考えています。Copilot 製品群はこのアーキテクチャに基づいて開発されており、ChatGPT で動いていたプラグインがBing Chat でも動いたりなどプラグインが Copilot 間で共通化されることが発表されました。現在統合されている製品は ChatGPT と Bing Chat のみですが、今後 Microsoft365 Copilot や Windows Copilot など様々な Copilot 製品に対象が広がっていくとのことでした。
このプラグインは Microsoft だけでなく、ユーザ企業側も作ることが可能なため、Microsoft 製品のユーザという大きな市場にプラグインという形で参入する門戸が開かれたという点で企業側としても非常にインパクトのある発表だったと思います。また、概念的なフレームワークである Copilot Stack だけでなく、Copilot Stackを実現するためのパーツとなる update も数多く発表されていました。
たとえば、Data Grounding を行う上で重要となるベクトル検索関係では、Azure Cognitive Search と CosmosDB でそれぞれベクトル検索に関係するアップデートが発表されていました。Azure Cognitive Search では従来の BM25 ベースの検索に加えてベクトル検索にも対応、CosmosDB も ベクトルの近傍探索クエリが利用可能になる、とフルマネージドと独自 embedding の両方に対応できるようになりました。それ以外にも、プロンプトエンジニアリングを支援するためのプラットフォームとして Prompt Flow が、AI が生成したコンテンツの適切性を判定するサービスとして Azure AI Content Safety がそれぞれ発表されるなど、Copilot Stack を実現するためのパーツは一通り Azure 上に揃った状態になったと感じました。
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ChatGPT 後の世界の圧倒的なスピード感
ChatGPT が 2022 年 11 月にリリースされて爆発的に普及してからわずか半年程度の期間で、M365 Copilot や Windows Copilot などの Copilot 製品を立て続けに発表しており、このスピード感には圧倒されました。ただ、このスピード感はおそらく Microsoft に限った話でなく、ChatGPT 後の世界では Microsoft 以外の Tech Giant たちも含めて各社がこのスピード感に従って製品を開発していくのだろうと思っています。そういった世の中で生き残っていくためには、自分自身も常に知識をアップデートし続けないといけないな、と身が引き締まる気持ちになりました。
その他気になったセッション
ここまでは Keynote や製品発表についての記載が多くなってしまいましたが、それ以外にも面白いセッションが数多くあったのでいくつかピックアップして紹介したいと思います。
Building and scaling cloud-native, intelligent applications on Azure
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Azure でスケーラブルなサービスを構築するための構成を紹介していたセッション。アプリケーションをクラウドネイティブな構成にするメリットの説明から丁寧に導入されており、大変勉強になりました。AKS・CosmosDB を利用することでスモールスタートしつつマルチリージョンの Active-Active 構成までスケールするアーキテクチャを実現可能とのことで、プロダクトが 0 → 1 → 10 → 100 → … とスケールしていくあらゆるフェーズで利用できるアーキテクチャだと感じました。
How GitHub Builds GitHub On GitHub
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GitHub が GitHub 自身をどのように開発しているのかを紹介するセッション。
開発環境はすべて Codespaces で管理されており、環境構築はワンクリックで完了
開発タスクの管理は GitHub IssueとGitHub Project を利用して行われている
デプロイはすべて GitHub Actions で行われている
といった形で開発のフローのほぼ全てを GitHub そのものが持つ機能によってカバーしており、開発者にとって価値のあるサービスを作るということに徹底していることがわかり大変有意義でした。セッションの中で GitHub 自体のプライベートリポジトリ(コミット数 145 万回!)の中を少し見せてもらえたのが個人的にはいい経験になったと思います笑
Build next gen intelligent retail with Azure OpenAI & Azure Cosmos DB
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CosmosDB をベクトル検索用の DB として利用して、Azure OpenAI Service による Chatbot に data grounding して応答させるデモアプリを解説するセッション。Copilot Stack のコアとなる考え方を Azure 上で実装する具体例を学ぶことができました。私自身、案件でベクトル検索を行うときにどのような DB を使えばいいのか選定に困ることが多くあったので、このセッションで CosmosDB でベクトル検索がサポートされるようになったと発表を聞いて早速試してみようと思いました。実際のコードも GitHub 上に公開されているので、ご興味がある方はぜひ確認してみてください!
最後に
今回、このような場に招待していただいた日本 Microsoft の方々にお礼を申し上げたいと思います。ChatGPT というブレークスルーによって今まさに世の中が大きく変わっている中で、その変化の最前線を走る Microsoft の現状を肌身で感じることができたのは本当に代え難い経験になりました。
今回のカンファレンス参加を通じて多くの update を知ることができましたが、それ以上に能動的に知識を収集して自身をアップデートし続けることの重要性を学ぶことができたことが一番の成果でした。
PKSHA の中でも今回の学びをソリューション・プロダクトとして社会実装していくことで、社会に還元していきたいと思います。そして、今後もこういったカンファレンス等に積極的に参加し最新技術をキャッチアップしつつ、未来のソフトウエアの実現のために注力していきます。
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