攻めと守りの両面からビジネスを支える「PKSHA AIヘルプデスク」の役割
エンタープライズを中心に、AI SaaS製品の提供を通して企業の課題解決を支援するPKSHA Workplace(パークシャワークプレイス、以下PKSHA)。
2022年に入社し、現在AIヘルプデスク開発グループのマネージャーとして「PKSHA AIヘルプデスク」の開発と運用を担当する成定 怜士さんは「プロダクトが成功し始めるフェーズでしか体験できないことがある」と話します。そんな成定さんに、これまでの歩みやPKSHAで働く魅力について聞きました。
「難しくて面白いこと」がしたくてPKSHAに転職
――PKSHAに入社する前のご経験についてお聞かせください。
私は神戸大学大学院工学研究科応用化学専攻を卒業し、新卒で製造業の会社に入社してプラント設計や開発に携わりました。Webとはほとんど関係がない仕事だったのですが、業務の一環でプログラミングに触れる機会があり、IT関係に興味を持つようになりました。
その後、知人の紹介で東京にあるWeb系企業に転職し、Webメディアの受託開発など幅広いジャンルの開発を行いました。2年ほど経ち、一定の技術力が身につくと、受託開発だけをする状態に物足りなさを感じるようになりました。
ITエンジニアのスキルや経験に応じて企業から指名が届く転職サービスに登録したところ、ブロックチェーン業界の会社からオファーがあり、転職しました。そこではブロックチェーンの開発、およびSNSを含めたWebとブロックチェーンの融合領域の開発を行いました。
1年ほどして法規制を含めブロックチェーン業界を取り巻く風向きが変わり、プロダクト開発を積極的に行うことができる環境ではなくなったことをきっかけに、退職してフリーランスエンジニアとなりました。独立志向があったわけではなく、世の中にはどのような業界があるのか、どんな働き方をしている人がいるのかを知りたいという動機でしたね。
フリーランス時代には、いくつかの会社から業務委託の仕事を請けていました。その一つである化粧品ECプラットフォームを運営する会社からスカウトされて正社員になり、リードエンジニアとしてシステム開発に3年間従事しました。
――そこから転職をしようと思ったきっかけは何ですか。
ECで化粧品のレコメンドシステムの開発をしているときに、個人(一般消費者)とコミュニケーションを取り、個人が気に入った商品を推薦することで購買行動を促進して、コンバージョン率を上げられる機能があったらいいのに、という話が社内で多く出ていました。
しかし、当時は自然言語処理を用いた機能の実装は技術的に難しく、実現しませんでした。「エンジニアとしてアルゴリズムを交えたプロダクト開発をしていきたい」と感じたことが転職のきっかけです。
私は業界の種類や年収以上に、自分の興味がある分野で働けるかどうかを重視しています。エンジニアとして必要とされスキルアップしていける環境に身を置きたいとも思いました。そこで、自然言語処理に強い会社を探し、株式会社BEDORE(現:株式会社PKSHA Workplace)のエンジニアリングマネージャーとカジュアル面談をすることになりました。
――PKSHAに転職を決めたポイントを教えてください。
エンジニアリングマネージャーとのカジュアル面談で、その時点の悩みとこれからやりたいことを話したときに、一人のエンジニアとして共感していただいたことが印象に残っています。
二次面接では二人の面接官に担当していただき、かなり深いところまで技術的な質問をしていただきました。技術を磨き続けてきた方だからこそ出てくる専門的な質問だったので、「PKSHAのエンジニアは全員技術力が高い」と確信し、ここでなら難度の高い開発もできそうだと思いました。
その後選考を進め、最終面接では代表の上野山から抽象度の高い質問をいただいて「この会社はすごく楽しいことをしているのだな」と感じ、ここで働きたいという気持ちが高まっていきました。
正直なところ、最初からチャットボットに強い興味があったわけではありません。しかし、PKSHAのチャットボットは単なるコミュニケーションの手段でなく、総合的に展開できる可能性があるものだと知って、大きな魅力を感じました。
AIヘルプデスク、「攻め」の開発と「守り」のSRE活動
――PKSHA入社後、どのような役割を担っていますか。
入社して最初の1年間は、現在執行役員の山本が当時テックリードを務めていた「PKSHA AIヘルプデスク(以下:AIヘルプデスク)」というプロダクト開発チームに入り、問い合わせの対応やオペレーターが見る画面といったヘルプデスク機能の開発に携わりました。
その後、山本がプロダクトマネージャー(PdM)になるタイミングで別の方がテックリードを引き継いだのですが、しばらくしてその方が育児休暇に入ることになったため、2023年1月、私がリーダーとしてのロールを引き継ぎました。それまでは機能の開発が中心でしたが、リーダーになってからは開発に加えてチームビルディングもするようになり、技術的な意思決定に伴う責任を負った上で仕事をするようになりました。
リーダーになって間もない頃、OpenAIがAzure上で新しいGPTモデルを出すという情報が入ってきました。UXデザイナー兼PdMの方と「対話の内容から自動でFAQのドラフトを生成する機能をAIヘルプデスクに実装することでより良い価値提供ができるのでは」と考えて実行に移し、結果的にAzure上でのサービス開始からわずか3週間で本番環境までリリースできたんです。
スケジュールがタイトで大変でしたが、みんなが「これは絶対にやったほうが面白そう」と言って、目を輝かせて取り組んでいたのが印象に残ってます。リーダーとして自ら重めの仕事を巻き取れたことだけでなく、フィールドセールスのメンバーたちから「あの機能を紹介したらお客様がプロダクトにより興味を持っていただけた」という声もたくさんいただき、自信がつきました。また、「その機能を使うことが楽しい」という声も実際にお客様から挙がっていたことも印象に残っています。
――サイト信頼性エンジニアリング(SRE)活動についてもお聞かせください。
システムが正常に動いているかどうかの主な指標は「レイテンシ」と「可用性」の2つです。この2つの指標を詳細に分析・監視し続けておくと、何かをリリースしたときに不具合が起こったら検知できます。さらに、「今こういった状態だから、来期はこのAPIのレイテンシをもうすこし小さくできる」といった話もできて、目標をどんどん高くしていけます。ここ1年はそうした活動をずっとしてきました。
導入社数が増えたことでデータベースのレコード数も増え、「特定のお客様がアクセスするときだけシステムにかかる負荷が高くなる」といった細かいことがわかるようになってきます。わかったら、改善のためのアイデアを具体的な施策に練り上げます。それを繰り返すことでシステムの安定稼働を実現し、お客様に快適なプロダクト体験を届けビジネスの成長を支えることがSRE活動です。
AIヘルプデスクのチームでは、インフラエンジニア、ソフトウエアエンジニアといった垣根を越えて、開発に関わる者であればSREのアプローチができたほうがいいという考えで、全員にやってもらっています。
――これからもSRE活動には注力したいと考えていますか。
レイテンシの大きなAPIやデグレーションがよく起きるところには技術的負債が溜まっていることが多いです。目に見えないコストとなってしまう負債を放置せず、返済していくことがシステムの安定稼働につながります。お客様に迷惑をかけることなく、支払っていただいた金額に相当する価値を提供し続けられる、と言い換えてもよいでしょう。
個人的には、SRE活動を続けるメリットの一つは、経営的なリスクを低減できることだと考えています。システムがダウンしてから慌てて対処するよりも、システムが危険な水位に達する前に気づいて修正し、そもそも問題を起こさないほうが内外から見て安心ですよね。不測の事態にみんなの時間を取られることもありません。そう考えているので、今後も新規の開発と並行してSRE活動を続けていきたいです。
息をするように新しい技術の情報を出す開発チーム
――チームではどのような姿勢でものづくりに向き合っているのでしょうか。
開発チームでは、「今こうなっているからこう作ろう」といったその場しのぎのやり方ではなく、全員が「長期的にスケールし続けるシステムを作ろう」「仮に自分が持ち場を離れたとしても他の人がメンテナンスできるように」という姿勢でものづくりに向き合っています。
なるべくみんなできるように、時間を取って教え合うだけでなく、「機能を作るのであれば必ず設計のレビューを全員に見せる」「設定を変更するときは、何のためにその意思決定がなされたかというレコードを残す」といったドキュメントの文化を作っています。属人化を排除し、情報がどこか一か所に滞留しないようにチーム全員で回す考え方です。
情報を共有することなく、敢えて属人化させることでスピードを出すフェーズもあると思いますし、その方がどんどん仕事をしていくので確かに早いのですが、その人がいないとチームが回らない状態は危ういですし、一人でできることには限りがあるので大きな仕事に継続的に対応できません。
PKSHAは「なるべくみんなできるように」という考え方とお客様への価値提供を意識したスピード感で開発を進められるよう努力しています。「人数が多くなってもスピードが落ちない」という事実は、将来もっと組織が拡大したときにじわじわと効いてくるでしょう。
――開発チームの雰囲気やカルチャーを教えてください。
息をするように新しい技術の情報を出してくるタイプの人が多く、「こんな面白い新技術があるので今度プロダクトに使ってみませんか」といった会話が一年中そこかしこから聞こえてくる稀有な環境です。全員が新しいものを取り入れることに意欲的で、常に「もっと良くする方法はないか」と考えているところが開発チームの魅力だと思います。
他のチームからは「開発チームの雑談はレベルが高すぎてもはや雑談じゃない」と冗談半分に言われるほどです。みんなアンテナの張り方がすばらしく、どんどん情報を出してくれるので、私はリスク管理以外は変にマネジメントせず、のびのびとやってもらっています。
現在AIヘルプデスクを開発するチームメンバーは9名ですが、1つのチームから複数のプロダクトが生まれているので、組織を最適な状態にしていくためにチーム分割も視野に入れています。
――PKSHAで働くようになって、変化はありましたか。
チームをまたいで1つのプロダクトを作っていく際のシステムの設計方法や、プロジェクトの回し方を習得できたと感じています。セキュリティ面での意識も高まり、安全に動かすための設計に関する知識も大幅に増えました。
社内にはKaggle Grandmasterに認定されている非常に優秀なアルゴリズムエンジニアもいます。彼らがどのような考えでアルゴリズムの機能を実装しているかを知ることができるのも、PKSHAならではでしょう。エンジニアとして大きく成長できた実感はありますが、この恵まれた環境で「成長させてもらった」というほうが正確かもしれません。
――今後携わるプロジェクトへの期待やキャリアビジョンがあればお聞かせください。
AIヘルプデスクがエンタープライズの企業様向けのプロダクトとして作られてから3年が過ぎ、たいへん多くのお客様に使っていただいています。プロダクトが成功し始めるフェーズを体験して、プロダクトの安定性やセキュリティをさらに向上させる必要性を感じています。新規開発もしていきますが、そういった守りを固めることも主導してやっていきたいです。
昨今、RAG(Retrieval Augmented Generation/検索拡張生成)を含め、新しい手法がどんどん登場しています。お客様も「どう使ったらよい効果が出るのかわからない」と悩みつつご導入いただき、変化の早い環境でPDCAを回しながら、お客様と一緒に正解に向けて開発を重ねている状況です。AIヘルプデスクの現在の機能および今後出していく機能を通して、1つの答えとなる「型」を証明できたらいいなと思っています。
キャリアビジョンでいうと、将来的に複数のAIモデルを組み合わせて人間の介入なしに特定のタスクを実行する自律型システム、いわゆる「AIエージェント」という分野の開発や導入に携わっていけたら楽しそうだと考えています。私がそれに携われるかどうかはわかりませんが、自身の興味に合わせてチャレンジできる可能性があるのがPKSHAの魅力ですね。
日常や業務に溶け込むAIやソフトウエアを生み出していける
――求める人材像について教えてください。
新しい技術や知識を自然に獲得していける人が理想的です。かつ、獲得したものを自分だけに留めるのではなく、広げることで周囲に影響を与えたり、抽象化して社会実装につなげていきたいと考えたりする人であれば、きっとPKSHAに合うと思います。
また、カスタマーサクセスやフィールドセールスといったビジネスサイドのメンバーと同じ視座で話せるエンジニアチームで在りたく、「自分はこういうことをやりたい」という気持ちに加え、「それは社会のこの部分に活かせるからやるべきなんだ」という気概を持っている人には是非来てほしいと思っています。
――PKSHAだからこそ得られる経験、学びなどがあればお聞かせください。
AIがどんどん進化していくなかで実際にエンタープライズのお客様に導入していただいているソフトウエアもあり、AIとソフトウエアが融合した状態でどのような影響を与えていけるかを間近で見られます。
エンタープライズ企業に導入されているということは、相当な人数のお客様に実際の業務で使っていただいているということ。最先端のAI分野において、自分で開発したプロダクトが社会に大きなインパクトを与えられるのは、PKSHAだからこそできる経験です。
私が入社した頃と比べると、現在の問い合わせのデータベースのレコード数は50倍以上に増えています。それだけ社会への浸透が進み、良くも悪くも、わずかなUXの違いが人の動き方に大きな影響を及ぼすことをダイレクトに感じられる環境です。
――最後に、候補者の方にメッセージをお願いします。
人類の歴史を振り返ってみても、社会を変えていくような革新的な技術は、ユーザーに新しい概念すら感じさせることなく、当たり前に日常に溶け込んでいくものだと思います。
AIが急速に進化するなか、PKSHAではカスタマーサクセス、フィールドセールス、PdM、エンジニアなど各業務を担う全員が、日々の業務で実際に使われるAIやソフトウエアを作ろうとしています。そうした取り組みにリアルタイムで携わっていきたいという人なら、きっと面白い経験ができるはずです。
―INFORMATION―
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