見出し画像

「AIをムダにしないサービスづくり〜プロダクト開発に正しく取り入れる方法とは?」ーGoodpatchXPKSHAイベントレポート

生成AIが社会を賑わせた2023年、デザインと開発の視点からAI実装を考える

生成AIが世界中を賑わせた2023年、様々な企業がAIの導入に向けアクセルを踏んでいた年でもありました。PKSHA Technologyは「人とソフトウエアの共進化」というミッションのもと、12年にわたりAIの社会実装に取組んでいます。
もともとは、企業の個別課題をAIで解決するソリューション事業がビジネスの主軸でしたが、ここ数年AIヘルプデスクやVoicebot等を展開するAI SaaS事業が事業収益の過半数近くを占めるまでに成長しています。

まだまだPKSHAはSaaS企業というと、意外に思われることが多いのですが、SaaS専門の開発チームが、お客様の声を取り入れながら日々開発やUX改善に取組んでいます。その中ではデザインの視点ももちろん重要視され、デザイナー・PdM・エンジニアが連携しながらプロダクトと向き合っています。

今回、デザインを主軸にコンサルティングやプロダクト展開を行うGoodpatchさんでも、昨今生成AIを取り入れたいという声が増加していることから、AIとUXデザインそれぞれを軸に事業を展開する両社で、AIを搭載するサービスについて深く考えようということで本イベントが企画されました。

スピーカー
・藤原 寛史(株式会社PKSHA Technology:経営企画室 AI SaaS事業企画グループ リーダー)
・花塚 匠(株式会社PKSHA Workplace:プロダクトマネージャー・UXデザイナー)
・石田 健二(株式会社グッドパッチ:UXデザイナー)

モデレーター
・栗田 透(株式会社グッドパッチ:UXデザイナー)

AIの導入は課題にあわせた人とのハイブリッドを前提に


石田氏(Goodpatch):GoodpatchではUXデザイナーとして新規事業の立ち上げや、リニューアル、ブランディング等を支援させていただいています。私たちは2011年に創業しUX/UIをメインに事業を展開していますが、昨今AIや機械学習を取り入れたデザインの相談も増えてきています。「成長しながらコミュニケーションができる」というAIの特性を生かしながら、人とAIの体験をデザインしていきたいという風に考えています。

現在、Goodpatchでは、広告やSaaS領域でAI導入に関する相談を受けることが多い中、導入を目的にするのではなく、何を実現するかが大切だという点を強調しました。例えば、同じコミュニケーションでも感情にあわせたコミュニケーションをしたり、親身になることが重要な場合、AIより人とのコミュニケーションが好まれるといったことを例にあげながら、①課題をならべる②AIと人、それぞれがやるべきでないものを探す③AIと人のハイブリッドな活用を考える、という3つのプロセスが重要だと述べました。

石田氏:結構0か100で考えられがちなのですが、1つの課題に対してAIで全部解決しようとか、全部人で解決しようということではなく、その課題の解決する手段を混ぜながら作っていくことが重要かと考えています。例えばPKSHAでは、AIチャットボットと人が連携しながら一つのコンタクトセンターの体験を作っていたりしますよね。(後述)時間が早いとか、対応品質の良さ等を考えながらハイブリッドな考え方を作っていくことが重要になってくるかと思っています。

2軸のUX改善アプローチで、ユーザーと相互作用しながら進化するサービスを作る


続いて、具体的にAIを搭載するサービスを作る上で意識しているポイントについて考えました。

花塚(PKSHA):PKSHAでは「人とソフトウエアの共進化」というミッションを掲げていて、ソフトウエアは人の暮らし方や働き方の可能性を広げていくためにあるという想いのもとAIの実装に取り組んでいます。自動化することでAIは人の仕事を奪うのではないか?という話がよくありますが、人の可能性を広げていくためにどういうことができるのか、更にはソフトウエアが人から学ぶことで進化する好循環をいかに作っていくかということを考えています。

藤原(PKSHA):私と花塚は主にSaaS事業に所属しているのですが、その中でも特に「企業内で使うSaaS」に取り組んでいます。社内問合せの自動化を通じて働き方をアップデートしていくようなプロダクト、例えば、AIチャットボットやボイスボット、FAQシステム、RPAシステム、あるいはそれらを連動させるシステムを提供しています。

AIを活用したサービスは、予め入出力が一定の規則で決まっていた従来のサービス(図:左の円)と異なり、入力に対して高度な処理が施され、ルールにそぐわない内容でも適宜情報を出力、さらにその積み重ねよって出力情報の精度を向上するということが可能になります(図:左の円)。それによって使う側も快適でコミュニケーション量が増え、更に精度が上がりAI SaaSが進化するという好循環が生まれていきます。

より快適なUXを実現するために、AIのコアを成すアルゴリズムにどの程度柔軟性を持たせたらお客様にとってよりよい体験になるかということを考えることが必要であり、AIを搭載したサービス設計には必然的にAIに関する技術背景の理解度も求められます。

花塚:私たちの会社全体において、人とソフトウエアの接点の設計=UXは非常に大事という認識が共通化しており、あるべき体験設計を実現できるエンジニアリング力や技術理解も備えています。また、AIが介在するサービスというのは、人が使うことでその形がユーザーに寄り添っていくという本当の意味でソフトなもの、柔らかいものであり、それがAI SaaSだという考えが基本にあります。

その上で、AIを搭載したサービスとそうでないサービスのUX改善プロセスの違いが紹介されました。今まではサービスそのものの改善を行うにあたって以下の図のように、リリースからデータ蓄積と分析、デザイン改修、ABテスト...といったプロセスを実施、一方、AIを搭載したSaaSにおいては、サービスそのものとその裏で稼働するAI、2軸でのブラッシュアップが必要になります。蓄積したユーザーの利用データを人が判断してチューニングすることで更に精度の高いAIを作っていくようなイメージです。これによって使えば使うほど良くなっていくということを実現しています。

更に、「使えば使うほどUXが向上する」という体験は言い換えてみればユーザーがユーザー自身でサービスをブラッシュしている感覚です。「一緒にサービスを作っている」というユーザー巻き込み型のUX改善サイクルを回すというものです。使いながらより良いものを作っていく意識や仕組みが必要という点を強調しました。

例えば、以下の「AIヘルプデスク for Microsoft Teams」という問合せシステムの例では、図のようにAIが答えられずに人が対応した部分(図②)がデータとして溜まっていきます(図③)。それによって、AIが「もしかすると自分はこういう点を学習した方が良いかもしれない」と自身で判断し、人に提案していくようになります。更に、その提案を人が確認することでAIの学習が正しい方向性で進むようにチューニングする機構が入っています。(図④)①〜④のサイクルの繰り返しによりAI精度が向上、使えば使うほど賢くなっていく仕組みをこのサービス上で実現しています。

花塚:特に①AIの特徴を理解してユーザーに利用してもらい、そのデータをAIの学習に活用するという点、④人の判断を交えるというのが特に大切なポイントで、AIが何を学習すべきか?という判断軸については人が介在することで、より良いUXが実現できると考えています。

全体設計からの逆算と早期のプロトタイピングが鍵

最後に、AIを無駄にしないサービスを作るポイントを探るべく、パネルディスカッションを行い議論を深めていきました。「AIサービスでUXデザインが重要視される理由」や「サービスのUXにAIを取り込むポイント」といったテーマについての議論、イベントタイトルでもある「AIを無駄にしないサービス作り」に関する議論の一部をご紹介します。

花塚:課題に対して「本当にAIが必要なんだっけ?」という問いを持ち続けながら作るといったところかが大切かと思っています。「人とAIに共進化構造があるか」という問いが結構社内であがるんですが、人が得意なところとAIが得意なところを適切に棲み分けて、拡張し合える関係性かどうかというのは、やはりサービスを作る上では意識していますね。

石田:あとは、すぐに成果を出すことを期待するのではなく、中長期目線で結果を見据えながら結果を出すために投資をしていくことも大切ですよね。

藤原:要件定義も大事ですが、AIの特性上、プロトタイプを作った上でそれをみんなで実践的に使っていくということも大切かなと。先にガードレールを引くのではなくていっぱい走らせてみて、どんな軌道をとるのか、というのを開発メンバーだけではなく色んなメンバーを巻き込みながら社内で合意形成していくということがプロジェクトを進める上で良いことかと考えています。

栗田:今話題になってる生成AIについては、誰でも操作できて、エンジニアとかデザイナーに限らず試しやすいっていう環境も、ある意味凄く面白い状況だなっていう風に思います。

藤原:まさに、エンジニアリングに長けてなくても、プロンプトをいじりさえすれば、アウトプット変えられるといった検証ができるのも、今のトレンドだなと思います。コードを書く人はもちろん、多くの視点を取り入れながらサービスを創ることで良いUXが実現できるのではないでしょうか。

あらゆるテクノロジーと同様、課題解決の手段としてAIをどう使っていくか全体設計から逆算して活用すること、そしてプロトタイピングを通じて体験づくりをしていくことが重要です。

AIサービス開発の現場に迫るオフラインイベントを1月開催

今回は、AIと人の共生方法やAIを活用したサービス作りに重要なポイントを議論し、AIのパフォーマンスが無駄にならないサービスを考察しました。

次回は、デザインや開発など制作の現場により近い領域をテーマに、第一線で活躍するデザイナー・エンジニア・プランナーによるAIのプロダクト開発への向き合い方やAIのものづくりの思考法について考えていきます。

現場における多職種との連携の仕方やAIサービスのプロジェクトの進め方など、課題感を抱えている方も、AIサービスに初めて挑戦する方も楽しめる内容となっていますので、ぜひご参加ください!

こちらより予約受付中です。

※好評につき増枠しました!第1回にご参加いただいていない方もお楽しみいただける内容になっています。

―INFORMATION―
PKSHA Technologyでは、ともにはたらく仲間を募集しています。
Wantedlyや採用サイトから応募が可能ですので、是非ご覧ください!

▼採用職種一覧

▼Wantedlyはこちら